謎解きクリエイター集団・RIDDLERに所属し、謎解きイベントやクイズを手掛ける傍ら、小説家としても活動する雨露山鳥さん。4月に発売された児童書『謎解き怪盗団シュロス 1 秘密の怪盗デビュー!』では、謎を解くだけでなく、謎を作る楽しさやノウハウを学ぶことができる。
謎解きが広く親しまれるようになった今、なぜ子どもたちに「謎を作る楽しみ」を知ってほしかったのか。児童書としての工夫、謎解きブームへの感想から、物語づくりの裏側を聞いた。
【第1回/全2回】
■「解く側」は増えている。だからこそ「作る側」を書きたかった
――『謎解き怪盗団シュロス』制作のきっかけを教えてください。
雨露山鳥さん(以下、雨露):当初は、子どもたちが謎解きに挑戦するという、いうなればスタンダードな物語だったんです。ただ、その段階で僕から「解く側ではなく、謎を作る側の話を書いてみたい」と提案しました。それが、今の形につながっています。
――なぜ謎を「解く本」ではなく「作る本」に方向転換したのでしょう?
雨露:ひとつは、以前に謎を解く側の物語を書いたことがあったこと。もうひとつは、最近、謎解きがブームになってきて、小説の中でも謎解きを扱う作品が増えている一方で、「謎を作る人たち」を描く作品はあまり見かけなかったことです。
謎解きは、解くだけでももちろん楽しいのですが、作る側にも面白さがあります。子どもたちに、謎を作る上で何を考えているのか、どんな楽しさがあるのかを伝えられるのは自分たちしかいないと思い、謎を作る物語にしました。
――児童書として書くうえで、難しかった点はありますか。
雨露:僕は何も考えずに書くと、わりと難しい文章になってしまって、普段も和語より漢語を使いがちです。やわらかい日本語よりも、少し硬い熟語を選びやすいので、そこを平易に言い換えることに最初は苦労しました。
今回は小学生の読者を想定していたので、辞書を引かないと分からないような表現を別の言葉に置き換えたり……。自分の素の文体とは違うので、そこは児童書ならではの苦労でした。
――謎を「作る」ことを描くうえでは、何を意識しましたか。
雨露:謎解きはただ文字を変換したり、手順をこなしたりするだけでは面白くありません。解く人がよく考え、「そういうことか!」と感じてもらえる要素を入れる必要があります。作中でも触れていますが、RIDDLERではその要素を「ひらめきポイント」と定義しており、“ただ指示に従っていれば解けるような問題”にならないための工夫が謎解きには必要であると、読者に伝わるよう意識しました。
今の子どもたちは、謎解きに触れる機会が増えていて、その中には、自分でも作ってみたいと思う子もいるはずです。そういう子に対して、「こう考えてみたら作れるかもしれない」と伝わる本にしたいと思いました。
■謎が謎を呼ぶ巧妙なストーリー設計
――「学校×怪盗×謎解き」という設定は、どのように決まっていったのでしょうか。
雨露:最初の案は、離島に住む小学生たちが、自分たちの島の魅力を伝えるために謎を作る、という物語でした。ただ、打ち合わせをする中で僕が「怪盗とかどうですか」と言ったら、気に入っていただけて。そこから、学校を舞台にした怪盗団の物語という方向でプロットを考えていきました。
設定としては少し複雑になりましたが、学校は子どもたちにとって身近な場所ですし、怪盗という要素も物語を動かしやすい。結果的に、謎解きと物語の両方を楽しめる形になったと思います。
――確かに舞台が学校であれば、子どもたちも親しみやすいですね。
雨露:一方で作中では、子どもたちが夜の学校に忍び込んだりと、少し危うい行動も出てきます。そこについては物語の中で「大人も事情を把握している」という説明が成立するように意識しました。学校を舞台にしているからこそ、子どもたちだけで危険なマネをしないよう工夫しています。
――本作では、主人公のハヤトと、ヒロインのチナツを中心に物語が動いていきます。それぞれのキャラクターは、どのように作っていきましたか。
雨露:メインヒロインのチナツはとにかく真っすぐで、謎を解くことに誇りを持っている子でいてほしかった。作中では、少しふてくされながらも、相手が用意した謎をちゃんと楽しもうとする場面がありますが、あれはチナツならそう言ってくれるだろうなと思って書きました。
一方で、主人公のハヤトはチナツや周りに振り回されがちな子です。でも、実はすごいものを秘めている。読者の子どもたちがハヤトに自分を重ねて、「自分にもできるかもしれない」と感じてくれたらいいなと思っていました。
――サブキャラクターのカズマやユイナに関してはいかがでしょう?
雨露:カズマは論理パズルやプログラミングといった特技を持ち、ユイナはイラストを使った謎を作ることが得意です。初心者であるハヤトに対し、実際の謎解き作りにも必要となる「論理的な考え方」「見た目で伝える力」を持たせています。
――物語の最後には、キャラの正体が気になる展開もありましたね。
雨露:最後のシーンの見せ方は、挿絵も含めてかなり意識しました。最初に送られてきたイラストがかなり笑顔だったので、「もう少し怪しい笑顔にしてください」とリテイクをお願いしました。誰がどういう立場なのかは読後の楽しみにしてほしいですが、表情ひとつにも、謎解きらしい余韻を残すように調整しました。
■謎解きブームの理由は「ちょうどよさ」にある
――いま謎解きが広く親しまれていることについて、どのように見ていますか。
雨露:たとえば「謎解きイベント」が最近よく開催されていると思いますが、外に出かけるアクティビティと屋内アクティビティのちょうど境目にあるコンテンツが「謎解き」なのではないかと思っています。
デートで外出するとルートを考えたり、天候に左右されたりと、何かと労力がかかると思いますが、謎解きは、キットを買ったり会場に行ったりすれば、進め方が案内される。完全なインドアでもなくアウトドアでもないちょうどよさが、大人に謎解きが親しまれている理由なのではないでしょうか。
――子どもたちに謎解きが親しまれていることについてはいかがでしょう?
雨露:子どもに対しては、もっと素朴な理由のような気がします。小学校の算数の教科書に載っているようなマッチ棒パズルって、今も昔もみんな夢中で解いていた記憶があると思うんです。謎解きは、その延長にあるものでもある。そこにテレビ番組やYouTube、SNSなどに触れる機会が増えたことで、「これなら自分でも解ける」という経験をする子が増えているかもしれません。
<プロフィール>
雨露 山鳥(あまつゆ・やまどり)
謎解きクリエイター兼小説家。2018年、東京大学在学中に『夏空のプレアデス』(小学館)でデビュー。そのほかの著書に『目指せ!ナゾトレ甲子園』『謎解き インク・バトル・サバイバル』(扶桑社)など。現在はRIDDLER株式会社で謎解きクリエイター&YouTuberとして活躍中。2026年4月には『謎解き怪盗団シュロス』を上梓。
<作品紹介>
『謎解き怪盗団シュロス 1 秘密の怪盗デビュー!』
松丸亮吾率いる謎解きクリエイター集団RIDDLER発!「読む」「解く」「作る」で楽しむ、新感覚・謎解き児童書!
名探偵に憧れる少女・チナツの助手として行動していた少年・ハヤトは、ある日、学校を騒がせる怪盗団〈シュロス〉の一員になってしまう。チナツに秘密を隠したまま、ハヤトは「怪盗」として謎を作ることに――。物語の中には、読者も挑戦できる謎解きが9問収録。謎を「解く」楽しさだけでなく、「作る」発想法や考え方も学べます。全漢字ふりがな付きで、小学校低学年から親子でも楽しめる、「学校×怪盗×謎解き」シリーズ開幕!
▼特設サイト
https://fr.futabasha.co.jp/special/nazotokikaitoudan/
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