1983年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始された、原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による人気作『北斗の拳』。核戦争後の荒廃した世界を舞台に、男たちの熱い死闘と哀しき宿命を描いたバトル漫画の金字塔である。
本作の舞台は、暴力と死が隣り合わせの過酷でシリアスな世界だ。しかし近年では、“ザコ”キャラクターに焦点を当てたスピンオフ作品が人気を博すなど、作中には多くのシュールな笑いが潜んでいる。キャラクター本人は至って大真面目かつ必死に生きているのに、読者目線ではその言動が妙にコミカルに映り、思わずツッコみたくなるような場面も存在するのだ。
今回はそんな『北斗の拳』に登場する最強キャラたちが見せた、愛すべき「シュールな天然ボケ」シーンを紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■実は本作随一の天然キャラ? 相手のボケに真顔で返す主人公「ケンシロウ」
北斗神拳伝承者である主人公・ケンシロウは、常に寡黙でストイックな男である。しかし、作品をあらためて読み直すと、彼が天然キャラのように見える場面もあった。
まずは、南斗六聖拳の1人であるシンとの戦いにて、フィアンセのユリアに相当近づいて、ようやく「に……人形!!」と気づいたシーン。暗殺拳の達人であり、気配を察知する能力に優れたケンシロウであれば、もっと早く人ではないと気づきそうなだけにシュールに思えた。
きっと愛するユリアを奪ったシンを目の前にして冷静さを失い、相当動揺していたのだろう。
また、後にマミヤを見たときに「ユ……ユリア!!」と勘違いしてしまうのも、彼の天然さがうかがえるシーンである。いつもは冷静沈着なケンシロウも、愛しいフィアンセが絡んだ際は気が動転してしまうのかもしれない。
ついでに、兄のトキになりすましていた自称・天才のアミバの変装にも気づかず、変わり果てた兄としてショックを受けるシーンも印象深かった。
その一方、ザコキャラがケンシロウに絡んできた場面では「くさい息を吐くのはそれぐらいにしておけ」「汚ねぇツラ近づけるな!」など、かなり辛辣な反応を見せる。天然かつ毒舌というあたりも、ケンシロウの魅力といえるだろう。
■なぜ信じてしまったのか…でかいババアを見抜けなかった「マミヤ」
拳王軍の特殊部隊に所属し、ケンシロウ一行を毒殺しようとした男(通称・コビト)がいた。巨大な彼は“か弱い老婆”、通称「でかいババア」に変装してケンシロウたちに毒入りの水を振る舞おうとするも、ケンシロウに「おまえのようなババアがいるか!!」とツッコまれて、成敗されたキャラクターだ。
しかし、ここで注目したいのは、ケンシロウに同行していた女戦士・マミヤが、コビトのことを本物の老婆だと信じ込んだ点である。
マミヤもコビトの姿を見たときはその異様さに驚いていたが、その後申し訳なさそうに「み…水を一杯いただけたらと……」と頼み、さらに「ありがとうおばあちゃん」とお礼まで言っている。
世紀末を生き、凄絶な戦いを繰り返してきたであろうマミヤが、見上げるほど巨大な老婆をすんなり受け入れてしまった天然さに思わずクスッとさせられる。
巨大な男がエプロンとカツラだけで老婆を演じるという強引さも相まって、まるでコントのようにも思えるコミカルな場面だった。
大前提として『北斗の拳』に登場する人物たちは、誰もが己の信念と命をかけて大真面目に戦っている。しかし、そのシリアスの中にあるからこそ、読者の意表を突く「奇跡的なシュールなシーン」が一際輝きを見せるのだ。
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