2026年2月23日、『エヴァンゲリオン』30周年記念イベントにて同シリーズの完全新作の制作が発表された。シリーズ構成・脚本を務めるのは、『NieR(ニーア)』シリーズや『ドラッグ オン ドラグーン』などで知られるゲームクリエイター・ヨコオタロウ氏。監督は鶴巻和哉氏と谷田部透湖氏、音楽は岡部啓一氏、制作はスタジオカラー×CloverWorksという布陣だ。
庵野秀明氏ではない『エヴァ』が新たに作られ、さらに人気ゲームクリエイターが関わるという発表はファンを驚かせ、SNS上では「ヨコオさんのエヴァは楽しみだがめっちゃ怖い」と期待と不安が入り混じった声が続出している。今回は過去作の具体的なシーンから、その独特な作風を振り返っていきたい。
※本記事は、ヨコオタロウ作品である『ドラッグ オン ドラグーン』『ニーア レプリカント』『ニーア オートマタ』の核心的な内容を含んでいます。
■ゲーム界の異端児、ヨコオタロウとは
ヨコオタロウ氏は1970年生まれのゲームクリエイター。ナムコなどを経て、2003年にスクウェア・エニックスから発売された『ドラッグ オン ドラグーン』でディレクターデビューを果たし、大きな注目を集めた。
その後、2017年発売の『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』で世界累計1000万本超のヒットを記録し、ゲーム業界で唯一無二の存在感を放つクリエイターとなった。絶望的な世界観とプレイヤーの感情を容赦なく揺さぶる物語が特徴であり、ヨコオ氏自身も過去のインタビューで『新世紀エヴァンゲリオン』から影響を受けたと公言している。
ヨコオ氏の代名詞ともいえる『ドラッグ オン ドラグーン』(2003年)は、剣と魔法の中世ファンタジーを舞台にしたアクションRPGである。
主人公カイムはレッドドラゴンと命を共有する「契約」を結び、竜の背に乗って帝国軍や怪物と戦い続ける。しかし“マルチバッドエンディング”とも称される作品であり、全5種のエンディングすべてに救いがないことでも有名なタイトルだ。
復活したヒロインが醜悪な怪物へと変貌するエンドや、味方であるはずの竜たちが人類を殲滅し始めるエンドなど、どのルートを選んでも絶望が待ち受けている。
中でも全エンディング制覇後にようやくたどり着ける通称「新宿エンド」は伝説となっており、剣と竜で戦ってきたファンタジー世界から一転、最終決戦の舞台が突如として現代の東京・新宿に移動する。主人公はドラゴンに乗って巨大な敵を辛くも倒すが、直後に駆けつけた自衛隊の戦闘機にミサイルでドラゴンごと撃墜されて終わるのだ。
すべてのエンディングを見尽くした先にある、最後の希望すら叩き潰す結末である。しかもこの「新宿エンド」から異世界の病原体が東京に持ち込まれ、はるか未来の荒廃した世界を描く『NieR』シリーズへとつながる壮大な仕掛けが施されている。
『NieR:Replicant(ニーア レプリカント)』(2010年)は、不治の病「黒文病」に侵された妹ヨナを救うために、主人公が「マモノ」と呼ばれる異形の敵を倒し続ける物語である。しかし、敵だと思って倒してきた存在の正体が、クリアを重ねるごとに徐々に明かされていく仕掛けが秀逸だった。
1周目では意味不明だったマモノたちの声が、2周目では字幕付きで表示されるようになる。彼らが命乞いをしていたこと、そして主人公こそが人間の魂を奪う側だったという真実を突きつけられた時の衝撃は計り知れない。
さらに最終エンディングでは、旅を通じてかけがえのない存在となった仲間・カイネが呪いに囚われてしまい、彼女を解放するために主人公が自分の「存在そのもの」を消す選択を迫られる。それに同意するとプレイヤーのセーブデータが本当に完全消去されてしまう。数十時間の記録が目の前で消えていく仕掛けは、ゲーム史に残る演出として語り継がれている。
世界的大ヒットとなった『NieR:Automata』(2017年)は、人類が月に逃れた遠い未来が舞台。地球を占拠した機械生命体に対し、人類に代わって戦うアンドロイド兵士・2Bと9Sの物語である。しかし物語が進むにつれて、守るべき人類はすでに滅亡しており、アンドロイドたちが命を賭けて戦う理由そのものが虚構だったと明かされる。
最終エンディングでは、文字通り想像を絶する強大な「創造主」を相手にシューティングゲーム形式で挑む演出が待っている。1人ではクリア不可能な弾幕を前に何度も失敗すると、見知らぬプレイヤーのデータが援護に駆けつけてくれる。そしてクリア後、今度は「誰かを助けるために自分のセーブデータを差し出すか」と問われるのだ。自己犠牲の連鎖がゲームシステムそのものに組み込まれた、ヨコオ氏ならではの仕掛けである。


