■初報映像に漂う「ヨコオ作品の匂い」

 今回の発表とともに公開された新作『エヴァ』初報映像はわずか1分42秒ほどだが、すでにヨコオ氏の色が濃いと話題になっている。

 壊れたオーケストラ楽器が廃墟に佇む映像は、シンジたちの物語の後の世界であるようにもとれるうえ、『NieR』シリーズで繰り返し描かれてきた「文明の残骸」のモチーフとも重なる。

 画面に映し出された「永遠の夏休み」「ここは私たちの楽園」「ここは私たちの墓場」「聞こえるのは劫罪の歌」というテキストも話題を呼んだ。これまでの『エヴァ』にもあった明朝体で情報を端的に提示するスタイルだが、この詩的な語り口はヨコオ作品に特有の「童話的な残酷さ」そのものである。聞き慣れない「劫罪」という造語も、永遠の罰を意味する「劫罰」を連想させ、『ドラッグ オン ドラグーン』の「終わらない苦痛」と通底するテーマを感じさせる。

 また岡部啓一氏による弦楽器中心の音楽も『ニーア』を彷彿とさせるものであり、映像を見ただけで作り手の個性が伝わるほどだ。

 ヨコオ氏の作品は、ただ絶望を突きつけるのではなく、その中にある美しさや犠牲の意味を問いかけてくる。

 希望と絶望の反転、自己犠牲の代償、そしてプレイヤー自身を物語に巻き込む巧妙な仕掛け。これらの要素は、人間の心の闇と向き合い続けてきた『エヴァンゲリオン』と極めて相性のよい作家性といえるだろう。

 庵野氏が「次なる作品を誰かに託したい」と語っていたその相手がヨコオ氏だったことは、驚きであると同時に深い納得感がある。ヨコオ&岡部という『NieR』コンビに、鶴巻監督というエヴァの遺伝子を受け継ぐ人物が加わるこの座組は、間違いなく「ただの新作」では終わらない。期待と恐怖が入り混じるこの感覚こそ、ヨコオタロウ作品ならではの入り口である。

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