■本格ミステリーとホームドラマで見せる新しい夫婦像

 今作『元科捜研の主婦』において、松本さん演じる主人公・吉岡詩織は、かつて「科捜研のエース」として名を馳せた過去を持つ専業主婦だ。一方、横山さん演じる夫の道彦は、捜査一課に異動したばかりの新米刑事である。少し頼りなさを覗かせつつも、要所で核心を突くような「刑事の勘」を発揮する道彦。その勘を、妻であり元科捜研のエースであった詩織が圧倒的な「科学力」で解明し、裏付けていくプロセスは実に見応えがある。

 そして何より視聴者の心を掴むのは、2人が体現する「新しい夫婦像」そのものだろう。例えば、第1話で描かれた家族ならではの微笑ましいバトンタッチの瞬間は印象的だった。

 事件解決のために科捜研を訪れた詩織と、勤務を終えて署から出てきた道彦。2人が「スイッチ!」とハイタッチを交わし、捜査と5歳の息子・亮介の育児を交代する。これは、2人の信頼関係を象徴するワンシーンであった。

 このように日常を描いたホームドラマとしての温かさと、本格的なミステリーの緊張感が交錯する。その絶妙なバランスこそが、本作が放つ大きな魅力と言えるだろう。

 

 報われぬまま幕を閉じた『ロンリー・マイルーム』から約20年。当時の物語を覚えているファンも、今作で初めて2人の空気に触れた視聴者も、この冬は吉岡家の行く末に魅了されることだろう。

 一家を支えるべく奮闘する新米刑事の道彦、妻としても捜査の面でも頼もしい詩織、そして2人を繋ぐ愛くるしい息子・亮介。この3人が織りなす吉岡家の活躍を、最後までじっくりと見届けたい。

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