車田正美氏による漫画『聖闘士星矢』は、1985年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始された人気作だ。ギリシア神話をモチーフとした壮大な世界観の中、主人公のペガサス星矢をはじめとする聖闘士たちが強大な敵に立ち向かう姿が見どころである。
本作において“強いキャラクター”といえば、主人公の星矢をはじめとした青銅聖闘士や、その先輩的な存在である黄金聖闘士を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、物語の序盤には、星矢たちを苦しめながらも彼らの強さを引き立てる役割を担った、いわゆる“かませ犬”のような聖闘士も多く登場していた。
そこで今回は、登場シーンは少ないながらも物語に深みを与えた聖闘士たちを紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■青銅聖闘士なのに…銀河戦争で主役キャラの強さを際立たせるための存在だった5人の戦士
物語は、聖闘士の称号を得て日本に帰ってきた星矢たちが「銀河戦争」に挑み、優勝賞品である「射手座の黄金聖衣」の獲得を目指すところから始まる。
この大会には星矢のほか、ドラゴン紫龍やキグナス氷河、アンドロメダ瞬、そしてフェニックス一輝といった主要キャラ5人が登場。しかし、彼ら以外にも青銅聖闘士は参加していた。それが、ベアー檄、ヒドラ市、ウルフ那智、ユニコーン邪武、ライオネット蛮である。
彼ら5人は星矢と同じ青銅聖闘士でありながら、実際のメインシーンはこの銀河戦争のみ。大会では、檄は星矢、市は氷河、邪武は瞬、那智は一輝と戦い、それぞれがメインキャラにボコボコにされて負けている(邪武は一輝によって撃沈)。
彼らは、結果的にメインキャラクターたちの圧倒的な実力を読者に示すための重要な役割を果たした。同じ青銅聖闘士でありながら、その実力には大きな差があることを読者に知らしめたのだ。
しかし、彼らの物語はここで終わらなかった。のちの「黄金聖闘士編(十二宮編)」において、彼らはアテナの城戸沙織を守るために再登場する。この時、銀河戦争では活躍シーンがほぼなかった蛮は「ライオネットボンバー!!」という技を披露し、「やった初ゼリフ!」と口にする印象的な場面がある。
短い登場シーンではあるものの、“自分たちも青銅聖闘士なんだ!”という存在感を見せつけていた。
■青銅聖闘士たちの身代わりに…非情な運命を辿った暗黒聖闘士
また、メインキャラの青銅聖闘士にそっくりな悪役、暗黒聖闘士の存在も忘れてはいけない。
中でも、「暗黒四天王」と呼ばれるブラックペガサス、ブラックスワン、ブラックアンドロメダ、ブラックドラゴンは、銀河戦争にて乱入した一輝の配下として暗躍していた。
彼らは、星矢たち青銅聖闘士から黄金聖衣を強奪するために襲いかかる。星矢はブラックペガサスから受けた黒死拳のせいで意識を失い谷底に落ちるなど、非常に苦しめられるのだ。
その後、辛くも暗黒聖闘士に勝利した青銅聖闘士たち。その戦いで命を落としたかに見えた暗黒聖闘士たちも、黄金聖闘士である牡羊座のムウによって救出されていた。
だがその直後、暗黒聖闘士たちは蜥蜴星座のミスティをはじめとする白銀聖闘士たちによって殺されてしまう。白銀聖闘士らはムウの仕掛けた幻惑により、暗黒聖闘士たちを青銅聖闘士だと勘違いし、手をかけてしまったのだ。
作中では一貫して星矢たちの敵対する悪役キャラとして描かれていた暗黒聖闘士たち。だが、中には人間らしい情を持つ者もいた。たとえば、ブラックドラゴンは紫龍の友情を信じる心に動かされ、彼の命を救ったあとに倒れている。
こうした背景を持つキャラクターが、青銅聖闘士たちの身代わりとしてあっさり殺されてしまう展開は非常にもったいなかったように感じる。彼らの退場を惜しむ声は少なくなかっただろう。


