凡人が天才に一矢報いた!『ハイキュー!!』『アイシールド21』『SLAM DUNK』凡人の努力が実を結んだ『少年ジャンプ』スポーツ漫画屈指の爽快シーンの画像
DVD「ハイキュー!!セカンドシーズン Vol.9 (初回生産限定版)」 (C)古舘春一/集英社・「ハイキュー!!セカンドシーズン」製作委員会・MBS

 スポーツ漫画の魅力は、超人的な才能を持つ天才たちの輝かしい活躍だけではない。その陰で歯を食いしばり、地を這い、悔し涙を流しながらも地道な努力で道を切り開いた“凡人”たちの姿も、読者の心を大きく揺さぶる。

 決して「天才」とはいえない存在でありながら、血のにじむような努力で時に周りを圧倒する輝きを見せる彼ら。今回は『週刊少年ジャンプ』(集英社)の数あるスポーツ漫画の中から、そんな“凡人”が天才に一矢報いたシーンを紹介していこう。


※本記事には各作品の内容を含みます 

■控えの一撃がチームの流れを変えた『ハイキュー!!』山口忠

 2012年から2020年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載された、古舘春一氏によるバレーボール漫画『ハイキュー!!』。

 主人公・日向翔陽と同じく烏野高校男子バレー部に所属する山口忠は、日向やその相棒的存在・影山飛雄とは違って、突出した才能を持っているわけではない。1年生唯一の控え選手であり、地味で目立たない平凡な存在だった。

 それでも彼はあきらめなかった。ベンチから仲間の背中を見るしかできなかった自分を変えるため、黙々と「ジャンプフローターサーブ」という武器を磨き続けてきたのだ。それでも、いざ試合となると怖気づいてしまい、逃げに走る場面もあった。

 そんな山口が大きな成長を見せたのが、春高予選での強豪校・青葉城西高校との一戦。劣勢の中で投入された彼は、緊張に震える手でボールを握る。そして体育館が静まり返る中で放たれた一撃は、風を切ってコートを突き刺した。

 「山口もう一本!!」そんな仲間の声に応え、2本目も成功。3本目は拾われたもののサーブ権は守り抜き、その後も4本、5本と彼のサーブが起点となって烏野が得点を重ねていく。劣勢だった烏野に再び火をつけたそのサーブは、まさに“流れを変えた一撃”だった。

 出場時間はほんの数分。しかし、その短い時間に込められた努力の重みは誰よりも大きい。ベンチで耐えた悔しさも、繰り返した練習の日々も、すべてがこの瞬間に報われたのである。

 山口の姿は、才能ではなく“努力で勝負する者”の象徴だ。彼が磨き続けてきた一撃は、見る者すべてに「努力はきっと届く」と教えてくれた──そんな熱を帯びた名場面である。

■天才への劣等感を越えた『アイシールド21』桜庭春人

 2002年から2009年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載された、原作・稲垣理一郎氏、作画・村田雄介氏によるアメリカンフットボール漫画『アイシールド21』。

 作中屈指の名門・王城ホワイトナイツの桜庭春人は、圧倒的な才能を持つ“天才”進清十郎の背中を追い続けた選手である。

 アイドルもこなす桜庭は、容姿もスタイルも華やかで目立つ存在だ。しかしその一方、アメフトの技術やセンスは凡人レベル。ファンからちやほやされながらも選手としてまるで活躍できない自分に嫌気が差し、次第に追い詰められていく。

 そんな中、試合中の不注意で骨折して入院することになった桜庭。「何やってんだろ…俺……」と涙するほど苦悩していた彼の前に現れたのは、少年・虎吉だった。アイドルではなく“王城ホワイトナイツレシーバー 桜庭春人”のファンだというその少年の言葉が、桜庭の心に火をつけた。

 退院後、彼は人が変わったように本気でトレーニングに打ち込み、急成長を遂げていく。それでも進との埋めがたい実力差に、「勤勉な天才に 凡人はどうやったら敵うっていうんだ」「凡人に生まれた男は どうしたらいいんだ…!!」と感情を爆発させてしまう。

 しかし、クォーターバックの先輩・高見伊知郎が「桜庭春人って相棒をずっと待ってた」と語るのを耳にし、ついに覚悟を決めるのである。

 そして迎えた秋大会。頭を丸めてヒゲを生やした桜庭は、高見からのパスを驚異的な高さでキャッチする「エベレストパス」を見事に成功させる。この光景は誰の目にもしっかりと焼きついたことだろう。凡人が努力で天才に食らいついたこの瞬間、桜庭春人はただの“憧れる者”ではなく、“戦う者”へと変貌を遂げたのだ。

 その後、桜庭が進と並ぶほど成長し大活躍する姿には、苦悩の時期を知っているからこそ心が大きく揺さぶられた。

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