『HUNTER×HUNTER』警戒心と猜疑心の塊・クラピカを導いた…イズナビ、センリツ、パイロという「作中屈指の聖人」たちの画像
「HUNTER×HUNTER 幻影旅団編 DVD-BOX I」(バップ) (C)POT(冨樫義博)1998年-2011年 (C)VAP・日本テレビ・集英社・マッドハウス

 『週刊少年ジャンプ』にて1998年から連載が始まった、冨樫義博氏による人気漫画『HUNTER×HUNTER』。個性豊かなキャラクターが登場する本作だが、その中でも美形で理知的、仲間想いのクラピカは屈指の人気を誇る。

 しかし同胞を虐殺された過去があるクラピカは警戒心や猜疑心が強く、復讐心にとらわれるあまり我を忘れてブチ切れる場面もある。また、いわゆる“煽り発言”で相手の神経を逆撫でし、険悪なムードを生み出すこともしばしばだ。

 そんな扱いづらい性格でもあるクラピカをうまくなだめて導いてきた、「聖人」と呼ぶべき印象的なキャラクターたちを紹介していこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

■クラピカの意志を汲んで導いてくれた師匠

 ハンター試験に合格したクラピカに、念能力を教える裏試験官として初登場したイズナビ。クラピカの回想シーンでは、念能力について論理的に説明する彼の様子が描かれていた。

 理路整然とした話しぶりとアドバイスの的確さから非常に頭がよく、師匠としてかなり有能なことがうかがえる。クラピカが「貴様」よばわりした挙句、自分にとって都合の悪い言葉には無視を決め込む態度を見せたときも、イズナビの方から折れて、幻影旅団と渡り合うための手段である「制約と誓約」を教えた。

 「制約」と「誓約」は言い換えれば「ルール」と「代償」であり、これらが厳しければ厳しいほど念能力による技の威力は爆発的に向上する。また、クラピカの「緋の眼」が発動したときのオーラの変質に気づいたのもイズナビであり、どちらも対幻影旅団の切り札となり得るものだ。

 実際にクラピカは半年ほどで念を習得し、その2か月後には「制約と誓約」と緋の眼を駆使して同胞の仇である幻影旅団のひとり、ウボォーギンを倒すという結果を出した。

 ふたりが一緒に登場するシーンは少ないが、マイペースで度量が広いイズナビがクラピカの念修行に根気よく付き合ったのだと推測される。何より自分を犠牲にしてでも仲間の仇を討ちたいというクラピカの想いをイズナビが汲んで尊重したからこそ、うまく関係を築いて導くことができたのだと思われる。

■念能力による本音の共有で分かり合えた同僚センリツ

 クラピカとセンリツの付き合いの始まりは、マフィアの「ノストラードファミリー」に雇われた同期のハンターという関係だった。同じ職場で働く同期といえば連帯感が生まれやすいが、クラピカの猜疑心と警戒心はその程度で崩れはしない。

 しかし尖った気質のハンターが多い中、センリツは人当たりがよく、いかにも優しい性格をしているので話しやすかったのだろう。クラピカは彼女に対しては煽り体質を発動することなく、素直に自分がクルタ族であることと目的を明かしていた。

 またクラピカが早い段階でセンリツに心を開いたのは、彼女が持つ能力と過去が大きく影響している。センリツの優れた耳は心音を聞くことで、相手の感情を手に取るように理解できる。

 これによって嘘が通用しないと悟ったクラピカは、本音で話す決断をした。このときセンリツも災いをもたらす「闇のソナタ」を聴いたために身体が変質したことや、友人を失ったことを明かしている。

 それぞれの過去と目的を共有したことで、ふたりの間には一種の共感や連帯感が芽生えたのだと考えられる。また、センリツもイズナビと同様にクラピカの仇討ちに協力的だった。

 ウボォーギンを前にしたクラピカが怒りと憎しみで我を忘れたときには、念能力を使ってリラックスさせている。数少ない本音を共有し合える関係であり、サポートしてくれる存在だからこそ、クラピカも彼女の言葉には耳を貸すのだろう。

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