フリル、レース、リボンがふんだんにあしらわれ、細部まで精巧に作り込まれた「ロリータ衣装」。まるでお人形のような印象を与えるこの衣装は、ただのファッションの枠を超え、見る者の記憶に残るビジュアルアートと言えるだろう。
それは、ドラマや映画の世界でも同様で、スクリーンに映し出されるその姿はあたかも現実の中に突如現れた夢のような存在感を放つ。女優たちは、その繊細で華やかな衣装をまとうことで、演じるキャラクターの魅力を何倍にも引き立ててきた。
今回は、そんな「ロリータ衣装」を映像作品の中で見事に着こなし、スクリーンに華を添えた女優たちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■田舎道を歩く“王道ロリータ”『下妻物語』深田恭子
嶽本野ばらさんの小説を原作とした映画『下妻物語』(2004年)。本作で深田恭子さんが演じた竜ヶ崎桃子は、「王道ロリータ」を象徴する存在だ。ピンクのドレスにふんわりと広がるフリル、袖口の繊細なレース、そして白い日傘。どこを切り取っても、完璧な「甘ロリ」スタイルで、まさに乙女心を具現化した存在だった。
特に印象的だったのが、本作の舞台である茨城県下妻の田舎道を全身ロリータファッションで歩く桃子の姿だ。のどかな風景の中に突如現れるそのミスマッチ感が、コミカルでありながらも美しく、忘れがたい。
衣装を手がけたのは、劇中にも実名で登場するロリータブランド「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」。1988年に誕生したこのブランドは、本作をきっかけに全国的な知名度を得た。
桃子が代官山にある同ブランドの店舗を訪れるシーンでは、自らリメイクしたボンネットを被り、白と黒のロリータファッションに身を包んでいる。隣には、紫の特攻服姿のヤンキー少女・白百合イチゴ(土屋アンナさん)が立つ。
ロリータとヤンキー、可憐とワイルドという正反対の2人が並ぶ姿は、まるで“異世界のコラボレーション”のようなポップさを放っていた。ちなみにエンディングでは、イチゴ演じる土屋さんも純白のロリータ衣装に身を包み、ファッションを通じて育まれる2人の絆が象徴的に描かれている。
当時のインタビューで深田さんは、ロリータファッションについて「“この服は可愛いから、わたしは絶対可愛いんだ!”っていう自信につながる服なんじゃないかな」と語っている。その言葉通り、彼女が体現したロリータ姿は、今も多くのファンの記憶に残っている。
■キラを崇拝する“ゴスロリヒロイン”『DEATH NOTE』戸田恵梨香
原作:大場つぐみさん、作画:小畑健さんによる漫画『DEATH NOTE』を実写化した映画『DEATH NOTE』(2006年)と、その続編『DEATH NOTE the Last name』(2006年)。
本作で戸田恵梨香さんが演じた弥海砂(ミサミサ)は、原作でも人気の高いキャラクターである。戸田さんは、原作そのままの「ゴシックパンク系ロリータ」で、キラに心酔するアイドル・ミサミサの魅力をリアルに映し出した。
印象的なのが、“第二のキラ”として夜神月(藤原竜也さん)の部屋に押しかけるシーンだ。ツインテールにまとめた髪、黒のタイトなトップスにチョーカーやアクセサリー、タータンチェックのミニスカート。パンク寄りのゴスロリスタイルが、ミサミサという少女の純粋さと危うさという二面性を鮮やかに際立たせていた。
10年後を描いた新章『デスノート Light up the NEW world』(2016年)でも、戸田さん演じるミサミサは再登場を果たしている。かつてのアイコニックなゴスロリ姿から一転、大人びたシックな衣装へ。その装いの変化からも、彼女が経てきた年月と内面の成長を感じ取ることができた。
アニメや原作版の根強い人気から、現在でもミサミサのコスプレを楽しむファンは多い。そんな中でも戸田さんが体現した“リアルなミサミサ像”は、唯一無二の存在感を放っている。スクリーンに咲いたその姿は、“実写ゴスロリヒロイン”の象徴といえるだろう。


