漫画やアニメの実写化において、衣装はキャラクターの再現度を左右する重要な要素である。中でも、身体のラインがビシッと伝わる“タイトなピチピチ衣装”は、キャラクターの魅力を一気に引き立てる重要アイテムだ。強さ、色気、可愛らしさ、そして気迫……これら多面的な要素が一瞬で伝わるからこそ、スクリーンに現れた際のインパクトは桁違いである。
今回は、そんなアイコニックで刺激的な衣装を見事に着こなした女優たちをピックアップ。衣装を味方につけ、キャラクターに命を吹き込んだ彼女たちの名演を振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■漆黒レザーで“悪のカリスマ”爆誕『ヤッターマン』深田恭子
2009年、NHK大河ドラマ『天地人』で淀役という大役を演じた深田恭子さん。同年に公開された実写映画『ヤッターマン』では一転、それまでのイメージを覆す役柄に挑戦した。彼女が演じたのは、黒革のタイトな衣装に身を包んだ悪役・ドロンジョだ。
本作の総衣装制作費は約5000万円にものぼり、中でもドロンジョのボンテージ風衣装は作品を象徴する存在となった。原作のデザインを崩さず、全身を包むレザーの質感と流れるようなラインによって、“妖艶な悪のカリスマ”を立体的に再現。艶めく黒革、身体の線を美しく見せるシルエット、存在感あふれるマスク。いずれも原作アニメの記憶を裏切ることなく、実写ならではの凄みを加えたデザインとなっている。
当時のインタビューで深田さんは「皆さんのドロンジョのイメージを裏切らないようにしつつ、実写版ならではのドロンジョになるよう自分なりにがんばりました」とコメントを寄せていたが、衣装合わせを重ねる中、細部にわたってアイデア出しをおこなったという。そして、「一緒に作り上げていったという気持ちです。この衣装をすごく愛しています!」という言葉からは、役と衣装に対する彼女の責任感と愛が伝わってくる。
作中では、ヤッターマン1号(櫻井翔さん)に唇を奪われ、思わず気持ちが揺れ動く一面を見せていたドロンジョ。悪役でありながら、ふとした瞬間に見せる恋する表情がたまらなくチャーミングだった。
深田さん版ドロンジョは、原作アニメの魅力をそのまま引き継ぎつつ、実写ならではの“とびきりキュートな悪役像”へとアップデートされた存在と言えるだろう。妖艶さも可愛らしさを両立させ、全力で演じきったその姿は、まさに唯一無二の“ドロンジョ様”であった。
■白黒世界を魅了する“漆黒女帝”『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』仲里依紗
2010年公開の映画『時をかける少女』で、等身大の女子高生・芳山あかりを演じた仲里依紗さん。本作での瑞々しいヒロイン像から一転、彼女は同年に公開された『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』で、観る者に強烈な印象を残す悪役・ゼブラクイーン役に挑んでいる。
ゼブラクイーンは、ゼブラーマンの“邪悪な側面”が具現化した存在であり、白と黒が渦巻くディストピア世界を支配する象徴的なキャラクター。ゼブラーマン/市川新市(哀川翔さん)の白いスーツとは対照的に、全身を黒で包んだ“黒ゼブラ”として君臨する。
胸元やお腹まわり、そして脚線までを大胆に強調したフィットスーツは、三池崇史監督が「理想は何も身につけない姿だけれど、それだと公開できないから『これくらい付けておく?』くらいきわどい感じ」と語るほど攻めたデザインだ。挑発的でありながらも、そこには緻密に計算された造形美が宿っている。
仲さんは撮影で、なんと気温2度の廃工場で約15メートルの高さに吊られたまま360度回転するワイヤーアクションに挑戦。総計100時間を超える過酷な撮影を走り抜けた。さらに作中では、妖艶な笑みを浮かべながら歌やダンスも披露。“支配者”としての存在感を完璧に体現していた。
漫画では正義の側面も描かれるキャラクターだが、仲さんが実写で作り上げたのは、それとは真逆の“漆黒の女帝”だ。冷たさ、気高さ、そして無慈悲なカリスマ性を、個性的な衣装とともに見事に演出。作中屈指のインパクト大の悪役として活躍した。
現在、飾らない言動と個性的なキャラクターで人気を集める仲さんだが、その表現者としての原点は、この役にあったのかもしれない。


