2025年に放送開始から25周年を迎えたドラマ『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)。10月15日からは最新シーズンのseason24が放送中で、主人公の杉下右京と相棒の亀山薫の活躍が毎週楽しめる。
右京の魅力は抜群の推理力だけでなく、「変人」と評される人間性にもある。マイペースな言動で周囲を振り回す姿は、物語に独特の面白味を与えている。
さて、右京にはティーカップがよく似合う“優雅”なイメージがあるが、時には捜査の一環で普段とはかけ離れた姿を見せてくれる場面もある。シーズン24の第1話でも、シリーズ屈指の「情けない姿」で大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。
今回は、そんな右京が過去に見せた「意外な姿」を振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■まるでスパイ…!?season3第9話「潜入捜査」
シーズン3第9話「潜入捜査」では、タイトルの通り、特命係が潜入捜査によって公安刑事の死の真相に迫る。薫は設備管理員、右京は警備員としてベンチャー企業に潜入し、社長について捜査。スパイさながらの右京の活躍が楽しめるエピソードだ。
このエピソードの魅力は、まさに「普段とは違った特命係の姿」だろう。右京は警備員の制服をまとい、深夜のビルを巡回する。英国紳士風のスーツで優雅に紅茶を楽しむ姿からかけ離れたワークスタイルは、強烈な印象を与えてくる。
もちろん捜査の一環ということで、深夜の巡回をしながらスパイよろしく情報収集をする。その時の緊張感は、まるでスパイ映画を見ているようだった。
ちなみに警備員としての右京の相棒は、温水洋一さん演じる葛城貫太郎だ。経験豊富で達観した葛城と夜の巡回をするシーンも多く、その際の会話は世知辛い世の中を憂えるものとなっていた。
「これは本当に『相棒』なのか?」と疑ってしまうほどに、このエピソードの序盤は独特の雰囲気に包まれている。それを楽しんでいるうち、同じく潜入していた薫とともに、埋もれていた公安刑事とその恋人の殺人事件の真相にたどり着く。
やがて物語は公安部を巻き込んだ壮大な事件に発展し、『相棒』らしいスケールで展開されていく。警備員姿に始まり、寝不足のせいで助手席で寝落ちしたり逮捕されたりと、めったに見られない右京の貴重な姿を楽しめる名エピソードだ。
■神戸とコントを繰り広げるseason9第12話「招かれざる客」
シーズン9第12話「招かれざる客」は、神戸尊が相棒だった時期のエピソードだ。右京はこの回で、ガラの悪い詐欺師に扮し、大袈裟な芝居を披露するという、シリーズ屈指のコミカルな姿を見せている。
とある事件の謎を解くため、犯人がいるとみられるオーベルジュへと向かった右京。そこには怪しげな宿泊客が複数人いて、徐々に複雑な事件の全容が明らかになっていく……。
終盤、決して口を割らない彼らを前に、右京は突如として豹変する。「ふっふっふ」と笑い出し、普段とはかけ離れたガラの悪い口調で話し出したのだ。「まだわからねぇか」「予定が狂っちまった」といった話し方で、おまけに一人称は「俺」。安っぽい悪人を装うこの演技は、シリーズ屈指のシュールなシーンとなった。
面白ポイントはこれだけにとどまらない。突如として「警察官役」の神戸が現れ、右京に手錠をかけ逮捕するのだ。まるでコントのような大根芝居が繰り広げられていたが、これこそが真犯人をあぶりだすための罠だったのである。
2人でコントを演じる特命係のコンビネーションもさすがだが、なによりもケチな詐欺師を演じる右京の姿が笑いを誘う「神回」だ。


