
『週刊少年ジャンプ』で2001年から2016年まで連載された、久保帯人氏による人気作品『BLEACH』。本作は、死神や虚(ホロウ)、滅却師(クインシー)、完現術者(フルブリンガー)といった多彩な“種族”と特殊能力、そして幾重にも張り巡らされた伏線が織り成す壮大な世界観で、多くのファンを魅了し続けた。
そんな中、物語の根幹を支える存在でありながら、正体や目的が長らく謎に包まれていたのが「霊王」だ。本記事では、この霊王がどのような存在で、物語にどういった影響を与えたのかを、原作やスピンオフ小説での描写から紐解いていく。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■長らく謎に包まれてきた霊王の正体
霊王は「尸魂界(ソウル・ソサエティ)」の王とされながら、その実態は三界(現世・尸魂界・虚圏[ウェコムンド])の均衡を保つ「世界の楔」として幽閉され、力も意思も奪われたまま生かされ続けてきた。その存在が最初に語られたのは「破面篇」のさなかだが、実際に姿が描かれたのは単行本第58巻。水晶の中に四肢を切断され閉じ込められており、異形ともいえる姿で描かれた霊王の姿は、「王」のイメージとはかけ離れていた。
護廷十三隊五番隊隊長・藍染惣右介が“王鍵”を作成し霊王宮への侵入を目指したのも、この霊王の存在を否定し、新たな世界を創造しようという意志の表れだった。
物語が進むにつれ、霊王が単なる王ではなく、“三界の循環と均衡”を司る中心的存在であることが明らかになる。その正体や過去について詳しく明かされたのは、スピンオフ小説『Can’t Fear Your Own World』でのことだ。
現世・尸魂界・虚圏という3つの世界は、もともと分けられていない混沌とした世界であり、そこに初めて秩序をもたらしたのが霊王であった。
霊王は虚を滅却し魂の流れを再生させる力を持つ “全知全能”の存在だったが、そのあまりに強大な力を恐れたのが“五大貴族”の祖先たちである。この5人は志こそ違ったものの、生と死を分離し世界に秩序を与えるという目的においては一致し、最終的に綱彌代家の祖が霊王を水晶に封印。さらにその四肢や心臓を切り離し、意志を完全に奪ったうえで“都合のいい楔”として利用する体制を築き上げた。
霊王はあえて抵抗せず人柱となったが、その背景には未来を見通す力を持つがゆえに、世界の命運のために自ら犠牲となる覚悟をしていた可能性も示唆されている。