あまりにも救いがない『聖戦士ダンバイン』に『蒼穹のファフナー』、『銀河烈風バクシンガー』も…視聴者を絶望させた「ロボットアニメの全滅エンド」の画像
DVD『聖戦士ダンバイン』第1巻(バンダイナムコフィルムワークス)(C)創通・サンライズ

 敵はもちろん、味方も全滅。全ての登場人物が死に絶える結末で、アニメ史にその名を刻んだ『伝説巨神イデオン』。全滅エンドの金字塔と呼ぶにふさわしい作品だろう。

 当時、勧善懲悪やヒロイックな物語が主流であったロボットアニメ界において、ディスコミュニケーションの積み重ねの末、登場人物が滅亡への道を進む救いがないストーリーは、視聴者に衝撃を与えた。

 このような全滅エンドを迎えるロボットアニメは、衝撃作ばかりである。だが、大まかな結末は同じ「全滅」ながらも作品ごとにテーマは異なるため、見終わった感想は意外と違うものである。

 そこでここでは、あまりにも救いがなく、だからこそ記憶に残る「全滅エンド」の名作を見ていこう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■キャラの死がもたらす無常さは随一『聖戦士ダンバイン』

 全滅エンドの金字塔『伝説巨神イデオン』を手がけた富野由悠季監督の作品、『聖戦士ダンバイン』。ファンの間では、『イデオン』と双璧をなす全滅エンドの代表作として語られている。

 ストーリーは現代で言うところの、いわゆる“異世界転移”もの。主人公は地上人のショウ・ザマ。彼が異世界「バイストン・ウェル」に突如召喚され、戦乱に巻き込まれていく様子を描いた作品である。

 その過酷さは容赦なく、ショウと一緒に召喚された地上人、トカマク・ロブスキーは敵対勢力の襲撃で早々に死亡。物語序盤から、ただ事ではない様相を呈している。

 戦いが激化する後半は、まさに死のオンパレード。ヒロインポジションだったマーベル・フローズンは爆発に巻き込まれ、志半ばにして戦死。異世界側の主人公ポジションであるニー・ギブンは、宿敵であるドレイク・ルフトを討ち取ったのち、人型オーラマシンのドラムロのコンビネーション攻撃によって機体も体も焼き尽くされて死亡。

 さらに、もう1人のヒロインであるリムル・ルフトも、母親に脳天を銃撃されて命を落とすなど、どのキャラの死亡シーンもあまりに唐突であった。

 数ある富野作品の中でも、キャラクターの死がもたらす無常観においては、この『ダンバイン』がいちばん秀でているのではないだろうか。

 そして、最終的にショウもまた、宿敵であるバーン・バニングスと刺し違えて散り、この時点で主要な登場人物はほとんどが死亡してしまう。生き残った者たちも女王シーラ・ラパーナによって浄化され、地上に残されたのはミ・フェラリオ(妖精)であるチャム・ファウだけ。

 このなんとも物悲しくも衝撃的な結末は、今もなおファンの間での語り草となっている。

■シリーズ最古の悲劇『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』

 2004年に始まったテレビアニメシリーズ初作品の『蒼穹のファフナー』から、2023年に発売されたOVA『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』まで、長きにわたり展開された『蒼穹のファフナー』シリーズ。

 時系列で一番はじめに来るのが、全ての物語の始まりを描いた前日譚、テレビスペシャルとして放送された『蒼穹のファフナーRIGHT OF LEFT』だ。

 常に死と隣り合わせの過酷な運命を描いてきた本シリーズ。その中でも時系列的に最も過去の出来事を描いているだけあって、放送前から「全滅」が約束された物語であった。当時の前評判や議論も、全滅エンド前提で語られていたことが思い出される。

 物語の主軸は、人類の楽園「竜宮島」を守るため、島の一部を切り離して囮にし、本島に知的生命体フェストゥムが来ないようにするという「L計画」である。

 それを成功させるため、少年少女たちはファフナー ティターン・モデルに搭乗するのだが、その性能はあまりにも心もとない機体であった。

 同化現象による肉体の結晶化を防ぐため、稼働時間はわずか15分。戦力としても、相討ち覚悟でようやく敵であるフェストゥム1体を倒せるくらいのものであった。

 案の定、ほとんどのパイロットは結晶化し砕け散っていく。残された主人公・将陵僚
と、ヒロインの生駒祐未は、海に潜れないはずのフェストゥムの性質を利用して潜水艇で脱出しようとするが、海中にもフェストゥムがいることが発覚。最終的に彼らは燃料気化爆弾・フェンリルを起動させ、敵と共に消滅するという結末に至る。

 この脱出用の潜水艇は人数分用意されており、作戦が順調に進めば全員生還するという可能性もあった。わずかな希望があったからこそ、あまりにも無慈悲な結末に涙した視聴者も多いだろう。

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