
漫画やドラマには多種多様なジャンルがあるが、昔から夫婦の愛憎やいさかいを描いた、いわゆる“ドロドロ系”の作品は昔から根強い人気を誇る。人には言えない不倫トラブルや慰謝料問題といったテーマを、フィクションとして楽しむ視聴者は多いだろう。
特にコンプライアンスや規範意識が強まっている現在、その反動もあってか、むしろこうした過激な内容の作品は増えているように感じられる。
ここでは、そんなドロドロの夫婦関係を描いた漫画の中から、実写ドラマ化された話題作を中心に紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■不倫や過去が複雑に絡み合う濃厚復讐劇『夫の家庭を壊すまで』
『夫の家庭を壊すまで』は赤石真菜さん、MUGEN FACTORYによる人気漫画で、株式会社アカツキが運営する「HykeComic」で配信されている。
実写ドラマはテレビ東京「ドラマプレミア23」にて24年7月に放送され、主演の松本まりかさんが、竹財輝之助さん、野波麻帆さん、野村康太さんらとともに、泥沼の四角関係を繰り広げた。
松本さん演じる主人公・如月みのりは、高校時代からの純愛を貫き、夫・勇大(竹財さん)と幸せに暮らしていた。しかし、夫は15年にもわたる不倫をおこなっており、その不倫相手とその息子との間に“もう一つの家庭”を持っていたことが発覚する。
ここからみのりの復讐劇が始まるのだが、その手口は単なる離婚や慰謝料請求では終わらない。彼女が利用したのは、もう一つの家庭にいる高校生の息子・三宅渉(野村さん)に近づき、内部から家庭を崩壊させようとするのである。
また物語が進むにつれ、みのり自身の出生の秘密や、今回の不倫の裏に隠された大きな陰謀も明らかになっていく。単なるドロドロの不倫劇ではなく、重厚なサスペンス要素が楽しめるのも本作の大きな魅力である。
■結婚生活の闇が招いた“共犯”の恐怖!『ただ離婚してないだけ』
『ただ離婚してないだけ』は、ある仮面夫婦が不倫をきっかけに最悪の事態へと転落していくサスペンス作品である。
原作は本田優貴さんによる同名漫画で『ヤングアニマル』(白泉社)で連載された。2021年にテレビ東京系列で実写ドラマ化され、北山宏光さんが主役のクズ夫・柿野正隆を、中村ゆりさんが妻・雪映を演じ、その過激な内容が話題を呼んだ。
正隆と雪映は夫婦関係が完全に冷え切っており、タイトル通り「ただ離婚してないだけ」の状態にあった。そんななか、正隆は若い新聞配達員の女性・夏川萌(萩原みのりさん)と不倫をしていた。しかし萌が妊娠したのを機に、慌てて関係を清算しようと試みる。だが、これに激怒した萌が雪映の元を訪れ、修羅場の末に正隆と雪映は共謀して萌を殺害してしまうのだ。
このドラマの見どころは、ほんの火遊びのつもりだった不倫が、殺人という決して超えてはならない一線へと発展してしまう恐怖にある。冷え切っていたはずの夫婦が殺人という秘密を共有することで、皮肉にも夫婦として再生していく姿がなんとも複雑だ。
もちろん、罪を犯した夫婦が平穏な生活を送れるわけがなく、柿野家にはその後も次々と絶望的な戦慄の展開が待ち受けているのである。