外見はジオン機でも「中身はガンダム」!? 正体を隠した「高性能MS」が生まれたワケ シナンジュにガーベラテトラ、ペーネロペーも…の画像
ガンプラ「MG 1/100 シナンジュ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 1979年放送開始のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』から46年が経過し、その間に数え切れないほど多くの続編や派生作品が生まれた『ガンダム』シリーズ。当然、作中に登場するモビルスーツの数も膨大である。

 その中でも、特に「ガンダム」の名前を冠する機体は、所属陣営を問わず印象に残る機体が多いのではないだろうか。しかしガンダムと呼ばれる機体の設定は作品ごとに異なり、判別が難しいケースも存在する。ビジュアルはどう見てもガンダムなのに、厳密にはガンダムではない機体や、その逆のパターンに該当するパターンも珍しくないのだ。

 そこで今回は、見た目や名前からはガンダムとは思えないのに、実は「ほぼ中身はガンダム」という機体に注目。なぜ、そのようなややこしい設定が生まれたのか、開発経緯などを踏まえながら振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■どう見てもネオ・ジオンの象徴なのに「実はガンダム?」

 OVA『機動戦士ガンダムUC』に登場する真紅の機体「シナンジュ」。ネオ・ジオンの残党による「袖付き」の首魁であるフル・フロンタルの専用機として知られる。その機体デザインやカラーリングからはシャア・アズナブルの愛機「サザビー」を連想し、後継機と思った人も多いのではないだろうか。

 『週刊ガンダム・モビルスーツ・バイブル 28号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によれば、シナンジュはアナハイム・エレクトロニクス社が開発した試作機「シナンジュ・スタイン」を袖付きが強奪し、カスタムしたものだという。

 シナンジュ・スタインの機体構造には連邦系の技術が色濃く取り入れられており、実はサザビーというよりνガンダムの発展機といったほうが近い。

 開発経緯としては、連邦の宇宙軍再建の一環として実施されたMS開発計画「UC計画」のひな形となったのがシナンジュ・スタインだ。つまりUC計画で生み出された「ユニコーンガンダム」シリーズの兄弟機にあたり、「ユニコーンガンダム0号機」ともいえる機体である。

 だからこそ、サザビーに似たビジュアルをしながらも、中身は「ほぼガンダム」といえるのがシナンジュなのだ。

 その証拠に、シナンジュのモノアイの下には、連邦系の流れを組むデュアルアイが隠れている。劇中でもシナンジュの頭部にダメージを受けた際、緑のモノアイの下にある赤いデュアルアイが不気味に光るシーンが描かれていた。

■「ガンダム開発計画」の中にいた異端児

 OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する「ガーベラ・テトラ」は、元ジオンで、のちにデラーズ・フリートに合流したシーマ・ガラハウの搭乗機となる。

 赤系にカラーリングされたガーベラ・テトラは、流線的なボディと緑色のモノアイという、ジオン系統のビジュアルをしたMSだ。

 しかしこのガーベラ・テトラは、地球連邦軍が推し進める「ガンダム開発計画」を委託されたアナハイム・エレクトロニクス社が開発。そのベースとなったのは「ガンダム試作4号機」、通称「ガーベラ」である。

 ガンダム試作4号機の基本フレームをそのまま流用し、外見だけジオン系のMSにした機体であり、基本的な中身はガンダムそのものだった。

 ガンダム試作4号機は「対MS戦最強」を目指して開発が進められたが、ガンダム試作1号機とコンセプトが重なったことで開発は中断。その後、裏取引していたシーマ艦隊に「ガーベラ・テトラ」として譲渡され、横流しを隠蔽すべくジオン系の機体に偽装されたのである。

 なお譲渡時のガーベラ・テトラはフェイスデザインが異なり、連邦系のデュアルアイや2本のロッドアンテナが残っていたとされる。その後、よく知られるモノアイと1本のロッドアンテナに改修が施された。

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