大黒摩季さん、中島みゆきさん、宇多田ヒカルさん……。彼女たちの歌声は時代を超え、人々の心をつかんで離さない。この3人は日本を代表する「歌姫」だが、実はそれ以外にも共通点がある。それはドラマ作品に出演して、演技にも挑戦していることだ。
圧巻の歌唱力と国民的な人気を誇る歌姫たちがどんな演技を見せているか、ファンならずとも興味深いはず。そこで今回は、時代を築いた歌姫たちが披露した名演技を振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■最初は誰かわからなかった…『ブラックペアン シーズン2』大黒摩季
『夏が来る』や『ら・ら・ら』などのヒット曲で知られるシンガーソングライター・大黒摩季さんは、2024年に放送された『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)で本格的な演技を披露している。医療ドラマ『ブラックペアン』は二宮和也さん主演の大ヒット作で、大黒さんはシーズン2の後半から最終回まで登場した。
大黒さんはこれが初のドラマ出演。東城大学医学部付属病院の副院長・内科医の江尻紀恵を演じている。その肩書きの通り、顔出し程度の“友情出演”ではなく、がっつり物語に絡んでくる役だ。
江尻はとにかく出世欲旺盛な人物で、肝の据わった佇まいから「ただものではない」感がにじみ出ていた。病院長の座を虎視眈々と狙い、自分の計画が着々と進むのを実感しながらほくそ笑む江尻。しかし、第7話ラストでは現病院長が次期病院長選にも出馬すると表明し、江尻にとって順調だったはずの流れが大きく変わってしまう。その時見せた怒りの表情は、まるで般若のようで恐ろしかった……。
メイクやファッションがアーティストとしてのイメージと異なるため、最初は江尻を演じているのが大黒さんだと気付かなかった人も多いのではないだろうか。だが、それほどドラマの世界に溶け込んでいたともいえる。しかしそんな中で、「声で気付いた」という視聴者も少なくなかった。
公式Xではドラマ出演について「人生って本当に面白い」と語っており、大黒さん自身もアーティスト以外のフィールドでの仕事を楽しんでいたようだ。
■ドラマ出演歴が豊富な中島みゆき
1970年代から現在に至るまで、第一線で活躍しているレジェンドアーティスト・中島みゆきさん。彼女は1977年にドラマ『明日の刑事』(TBS系)でドラマ初出演を果たして以来、ドラマや映画にたびたび出演しているが、近年では2017年放送の『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)が話題になった。
倉本聰さんが脚本を担当した本作では、主演の石坂浩二さん、浅丘ルリ子さん、加賀まりこさんといった往年の大スターたちが老人ホームを舞台にコミカルな演技合戦を繰り広げる。
本作のオープニングテーマは中島さんの『慕情』で、なんと中島さん本人も64話、70話、102話で車椅子を押す入居者役としてサプライズ出演。中島さんが押す車椅子には倉本さんが乗っており、そのあまりに豪華すぎるカメオ出演が話題を呼んだ。
いずれもセリフはないが、ゆったりとした動きで車椅子を押す場面もあり、画面に映っている時間はわりと長め。夫を覗き込む時の表情や動きから、夫婦の関係性が垣間見えるようだ。主要登場人物ではないにもかかわらず、思わず目で追ってしまうほどオーラ抜群だった。


