
甲斐谷忍氏による漫画『LIAR GAME』が連載開始20周年を迎え、ついに待望のアニメ化が決定した。数ある心理サスペンス漫画の中でも「ルールが複雑なのに面白い」と評されてきた作品で、SNSではすでに「ようやく来たか」「最後まで読んだけどまた見たい」などと話題になっている。
『賭博黙示録カイジ』や『嘘喰い』といった同ジャンルの人気作と比べると、『LIAR GAME』は「ルールを理解して勝敗の行方を楽しむ」というよりも「人間同士の駆け引きとドラマを味わう」ことに重点を置いているのが特徴だ。
今回はそんな本作の魅力をあらためて振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■ゲームを通して描かれる人間ドラマ
『LIAR GAME』は、ある日突然、莫大な賞金が動く謎のゲームに巻き込まれた正直者の女子大生・神崎直(ナオ)が、元天才詐欺師の秋山深一と手を組み、さまざまなゲームを突破していく物語。序盤から「少数決」「リストラゲーム」など、シンプルながら裏の裏をかかれる構造のゲームが続き、読みやすくもスリリングな展開が続く。
ところが物語が進むにつれ、ゲームはより複雑になり、「イス取りゲーム」「入札ポーカー」「三国志ゲーム」など、条件や例外処理が多く一読では理解しきれないレベルにまで進化していく。それでもなお多くの読者が「ルールは分からなかったけど面白かった」と評価するのは、ルールそのものよりも、そこで起きる人間ドラマと心理戦にこそ面白さがあるからだろう。
『カイジ』の場合、「限定ジャンケン」や「Eカード」のように、シンプルなルールの中でギリギリの駆け引きが展開される。読者はルールを理解したうえで勝負の先を予想し、主人公と一緒に追い詰められる感覚を楽しむスタイルだ。『嘘喰い』は、「エアポーカー」に代表されるように、ルール理解と推理そのものが知的パズルとしての快感を生む。さらに、ギャンブル×暴力が組み合わされているのも特徴的だ。
一方で『LIAR GAME』は、ルールを完全に理解していなくても登場人物の感情や動きを追えるように設計されている。騙し騙されるプレイヤーたちの混乱や葛藤、相手の裏をかく秋山の知略、皆を信じ救おうとするナオのまっすぐな心──そうした心理の動きが鮮やかに描かれることで、ゲームルールの細部に対する理解なしでも物語が成立するようになっている。