愛が憎しみに変わる瞬間…『名探偵コナン』“勘違い”が引き起こした「悲しき事件」“カラオケボックス殺人事件”に“ゾンビが死んだ夜”も…の画像
青山剛昌 『名探偵コナン 1 SPECIAL』(少年サンデーコミックス)

 1994年から『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載が始まった、青山剛昌氏による大人気漫画『名探偵コナン』。1996年から放送が開始されたテレビアニメは、25年以上続く長寿シリーズとなっている。アニメのエピソード数は1150話を突破した。(2025年現在)

 数多く描かれる事件の中には、勘違いによって愛する人を殺してしまう悲劇も存在する。爽快感のある事件よりも、こうした切なくやりきれない事件の方が、より印象に残っている人も多いのではないだろうか。

 そこで今回は、登場人物たちの勘違いが原因で起こってしまった悲しい事件を紹介する。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■愛しているからこそ、どうしても許せなかった「カラオケボックス殺人事件」

 アニメ第42話「カラオケボックス殺人事件」は、アニメ放送1年目のクリスマスシーズンに放送された事件だ。初期の事件だが、「赤鼻のトナカイの事件」と言えばピンとくる人がいるかもしれない。人気ロックバンドのボーカルと美人マネージャーの悲しいすれ違いが、2人の仲を永遠に引き裂いてしまう物語だ。

 鈴木園子のコネにより、人気バンド「レックス」の打ち上げカラオケに参加した毛利蘭と園子、そして江戸川コナン。しかしバンドメンバーの雰囲気は最悪で、バンドは近々解散する予定だと告げられる。

 そんな中、急に「赤鼻のトナカイ」が流れ始める。リクエストしたのはボーカルの木村達也。馬鹿にした態度で、バンドの美人マネージャーである寺原麻理に歌うように促した。

 その後、食事を始めた達也は、急に喉を押さえて苦しみ出し、亡くなってしまう。死因は毒物によるものと診断されたが、食べ物からは毒物は検出されなかった。

 捜査の結果、コナンは毒が達也の服に塗られていたことを突き止めた。そして犯人は、マネージャーの麻理。犯行の動機は、愛情が憎しみへと変わってしまったことによるものだった。

 麻理はずっと好きだった達也に振り向いてもらうため、整形手術を受けていた。しかし、その後の彼は、むしろ麻理の容姿を馬鹿にし、突き放すような言動を取るようになった。麻理は達也を愛しているからこそ、その仕打ちが許せなくなっていったのである。

 しかし、真相はまったく異なる。実は達也は、整形する前からずっと麻理を大切に想っていた。そんな麻理が、自分のために整形した事実が許せなかったのだ。彼の冷たい態度も、愛情の裏返しであった。バンド解散後にリリースする予定だった新曲には、心からの麻理への想いが綴られていた……。

 お互いに深く愛しているからこそ許せない、悲しいすれ違いが引き起こしたこの事件。「コナンって単純な勧善懲悪の物語じゃないんだ」と、印象に残っているファンも多いのではないだろうか。

■何もかも、恋人までも自分の真似をする妹「バスルーム密室事件」

 アニメ第121、第122話で放送された「バスルーム密室事件」では、美人姉妹の悲しいすれ違いが描かれた。

 とあるファミレスで、蘭とコナンを前に異常に機嫌が良い毛利小五郎。小五郎を上機嫌にするものと言えば、酒とタバコとギャンブル、そして大ファンである沖野ヨーコだ。その“ヨーコちゃん”の武道館コンサートを前にはしゃぐ小五郎だったが、いざ向かおうとしたその時、チケットがないことに気が付く。

 小五郎は大慌てでチケットを探すも見つからず、落胆する小五郎。だが、幸運にもドタキャンされてチケットが余っているという女性・青島全代と出会う。ダメもとで聞いてみたところ、家で待つ妹・美菜を一緒に迎えに行ってくれれば譲ってくれるとのことで、二つ返事でOKした。

 車で美菜の家へ向かう小五郎たち。しかし、到着すると美菜は浴室で亡くなっていた。

 捜査の結果、コナンは全代が犯人だと突き止める。犯行の動機は、妹が自分の真似をし過ぎることへの恨みであった。服装や趣味、持ち物にいたるまで全てを真似され、ついには恋人まで平気で奪っていった。全代はそんな妹が許せなかった。

 だが、それは誤解だったことが判明する。全代への気持ちがなくなった恋人は、自分から美菜に言い寄っていた。むしろ美菜はそれを拒み、全代とヨリを戻すように説得していた。プライドの高い姉を傷つけたくない一心で、美菜はその事実を打ち明けられなかったのだ。

 姉妹だからこそ存在する強い絆と愛情。その愛情がすれ違いにより憎しみに変わってしまった、非常にやりきれない事件であった。

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