全ての元凶は彼ではない? 竈門家を襲った理由は? 『鬼滅の刃』本編で明かされなかった「鬼舞辻無惨にまつわる謎」の画像
『鬼滅の刃』4[DVD](アニプレックス)©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 最終決戦となる「無限城編」を描いた劇場版が7月18日に公開された吾峠呼世晴氏の『鬼滅の刃』。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と、タイトルにあるように「無限列車編」で驚異的な強さを見せた上弦の参・猗窩座との死闘が描かれている。

 劇場版は今後、第二章・第三章と続いていくが、いよいよ宿敵・鬼舞辻無惨との直接対決が目前に迫り、ファンはその展開から目が離せない状況だ。

 そんな本作における全ての元凶であり、最も重要なキャラでもある鬼舞辻無惨。だが、彼についてはいまだ謎に包まれた部分が多い。そこで今回は、本編で明かされていない「無惨の謎」を深掘りし、その正体に迫っていきたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■全ての元凶? 無惨を治療した医者の正体とは

「鬼の始祖」である無惨も、元は平安時代に生まれた人間だ。体の弱かった無惨は、20歳を迎えることはできないと宣告されていた。そんな彼が少しでも生き永らえるようにと治療していたのが、1人の善良な医者である。

 医者は独自に薬を調合し、無惨に飲ませていた。しかし、一向に良くならないことに苛立った無惨は、その医者を殺害。皮肉なことに、医者の作った薬の劇的な効果が判明したのは、彼が殺されたあとのことだった。

 薬の効果により、無惨は強靭な肉体と不老不死の力を手に入れて鬼となった。しかし、一方で太陽の光のもとを歩けないという致命的な弱点を背負うことになったのである。

 この経緯だけを見れば、薬で無惨は鬼となったのだから、全ての元凶は無惨を治療していた医者であったかのように見える。彼は本当に“善良な医者”だったのだろうか。

 医者の死後、太陽を克服するため、無惨は「青い彼岸花」を原料として作られたその薬を作ろうと奔走する。しかし、薬は未完成であり、青い彼岸花の生息地を知る唯一の人物である医者を殺してしまったことで、無惨は二度と薬を飲むことができなくなってしまった。これが、1000年以上にもわたる彼の“青い彼岸花探し”の始まりである。

 結局のところ、医者は怒りに任せた無惨によって一方的に殺害されており、黒幕などではない。弱っていく無惨を救うため、試行錯誤しながら薬を作っていた努力家であり、心優しい人物だった可能性が高い。

 感情に支配されて恩人を殺害し、鬼になったあとも躊躇なく人間を殺して、その血肉を貪っている無惨。その冷酷で自己中心的な性質を考えると、鬼になるべくしてなった人間だったのかもしれない。

■なぜ狙われた? 無惨が竈門家を襲った理由とは

 物語の全ての始まりは、山奥に住む主人公・竈門炭治郎の家に鬼が襲来し、妹の禰󠄀豆子以外の家族を惨殺したことにある。

 竈門家は代々炭売りを営む普通の家族だった。仕事柄、人里離れた場所に居を構える竈門家に突然襲来した鬼は、母と幼い弟妹たちの命を奪い、禰󠄀豆子を鬼に変えた。

 のちに街中で、竈門家に残されていた鬼の匂いを辿った炭治郎が無惨本人を探し当てていたことから、竈門家に襲来した鬼は無惨本人であったことが判明する。

 では、なぜ無惨は、わざわざ竈門家を狙ったのだろうか。

 その理由はいくつか考えられる。その1つは、無惨が探し求める青い彼岸花の存在だ。

 2021年に発売された公式ファンブック第2弾『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』によると、炭治郎たちが住んでいた雲取山には青い彼岸花が自生しており、炭治郎の母・葵枝が、その場所を知っていたことが明かされている。

 かつて那田蜘蛛山編で下弦の伍・累と対峙した炭治郎は、戦いの最中、走馬灯の中で青い彼岸花を目にしている。だが、この花は毎年咲くわけではなく、年に数日、短時間しか咲かない希少な花であったため、6人兄弟の中で実際に見たのは炭治郎だけだったという。

 無惨は、青い彼岸花を探す過程で、竈門家を見つけたのかもしれない。

 そして、もう1つの理由が、竈門家が日の呼吸を継承していたことにあるだろう。

 無惨は青い彼岸花探しと同時に、太陽を克服できる鬼を生み出すことも目的としていた。かつて自身を追い詰めた始まりの呼吸である日の呼吸を神楽として継承する竈門家に何らかの可能性を感じ、鬼化を試みたのではないだろうか。

 結果として、禰󠄀豆子は鬼化したあと、太陽を克服した唯一の存在となった。無惨が探し求める逸材であったことは明らかであり、ある意味、読みが的中したことを示唆している。

 青い彼岸花と日の呼吸、この2つの要因が重なったことが、無惨をおびき寄せ、竈門家の悲劇を引き起こしたのかもしれない。

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