■名前を呼ぶだけで死亡する? 「呪い」の能力

 無惨の能力で、鬼たちが一番恐れていたのが「呪い」の存在だった。無惨の呪いは、血を与えられた鬼全てにかけられており、決して逃れることはできない。

 この呪いによって、無惨は鬼たちの位置情報を常に把握している。これにより、「無限列車編」では敗れた「下弦の壱」の魘夢に代わり、付近にいた猗窩座を向かわせるといった対応も可能だった。

 そして、この呪いには最も凶悪な側面がある。それが、「無惨のことを話すと死ぬ」というものだ。作中、この呪いが発動したのは1回きりで、鞠の鬼・朱紗丸に対してである。

 珠世に無惨を侮辱され、「黙れ黙れ!! あの方はそんな小物などではない!!」「誰よりも強い鬼舞辻様は」と、思わず口にしてしまった朱紗丸。慌てて許しを乞うも、瞬時に口や体から巨大な腕が生え、体を破壊されてしまった。

 体内に残留する無惨の細胞が暴走し、内側から肉体を破壊するというこの呪いは、鬼たちにとっては時限爆弾のようなものだ。炭治郎が沼の鬼から無惨の情報を聞き出そうとした時も、「言えない 言えない」と、怯える様子が描かれていた。

 この呪いは全ての鬼にかけられているが、ただ1人、珠世だけは無惨の呪いを外すことに成功している。彼女は自らの身体を用いた試行錯誤の末、無惨の支配から逃れることができたのだ。

■近づくことさえ許されない! 「血鬼術」の能力

 ある程度の力を持つ鬼たちは「血鬼術」と呼ばれる異能力をそれぞれ持っている。たとえば、禰󠄀豆子の血鬼術である「爆血(ばっけつ)」は、自分の血を爆発させ、時には人間の体内に入った鬼の毒さえも滅却することができる。

 鬼の強さを左右する重要な要素でもある血鬼術だが、無惨の血鬼術も「柱稽古編」のクライマックスで初めて判明した。

 鬼殺隊最強と謳われる岩柱・悲鳴嶼行冥が無惨に迫った際、無惨は「黒血枳棘(こっけつききょく)」という血鬼術を使用した。これは、自らの血を赤黒い棘の鞭のように変化させ、広範囲に無数の攻撃を繰り出す術である。悲鳴嶼の卓越した高い身体能力と判断力がなければ、おそらくひとたまりもなかったはずである。

 「無限城編」では、無惨のさらなる能力や、隠された他の技がいよいよ明らかになるだろう。

 

 人間を鬼に変える能力、瞬時に肉体を再生する能力、自在に姿を変える擬態能力、そして配下の鬼を支配する呪いと強力な血鬼術。これらの常軌を逸したチートすぎる能力の数々は、無惨が『鬼滅の刃』のラスボスとしてふさわしい存在であることを証明していると言える。

 しかし一方で、生身の人間でありながら「呼吸」という技術を極めて鬼と戦ってきた鬼殺隊の身体能力、そして、精神力と覚悟には、あらためて胸を打たれてしまう。

 作中屈指のチートキャラと、炭治郎たちの最終決戦を、ぜひその目で見届けてほしい。

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