
7月18日に公開された、吾峠呼世晴氏原作の劇場版アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。現時点で、動員2110万人、興行収入299億円突破(9月2日現在)となっており、日本映画史に残るメガヒットとなるのは間違いない。
本作の舞台・無限城では、いよいよ「鬼殺隊」にとって最大の宿敵・鬼舞辻無惨との最終決戦が描かれる。
ここに至るまでも、作中で描かれてきた無惨の能力は、まさにチート級と呼ぶにふさわしいものばかりだった。
そこで今回は、来るべき決戦に備え、鬼の始祖・鬼舞辻無惨の「チートすぎる能力」の数々をあらためて振り返りたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■自分の血で人間を鬼に変える「鬼化」の能力
無惨の能力の中でも特に凶悪なのが、人間を「鬼化」させる能力だろう。
物語の冒頭では、主人公・竈門炭治郎の妹である禰󠄀豆子も、この能力によって鬼になってしまった。炭治郎が鬼と戦う「鬼殺隊」に入隊するきっかけにもなった、まさに無惨を代表する能力である。
無惨は自分の血を分け与えることで、人間を鬼に変えることができる。過去に炭治郎が対峙した鬼の多くは、死の間際に無惨と遭遇し、生き長らえるために鬼となる道を選んでいた。それぞれが悲しい過去や強い思いを背負い、鬼化を決断していた姿が印象的であった。
しかし、無惨の血を普通の人間が取り込めば、順応できずに細胞が壊れて死に至る。その中で適応できた者だけが鬼となり、さらに類い希なる強さを持つ鬼は「十二鬼月」と呼ばれる特別な存在となるのだ。中でも「上弦」と呼ばれる鬼たちは、無惨のように自分の血を与えることで人間を鬼化させる能力を得ていた。
作中では、「無限列車編」に登場した「上弦の参」である猗窩座が、鬼殺隊の炎柱・煉獄杏寿郎の強さを讃え、「お前も鬼にならないか?」と執拗に誘っていたのが印象深い。
また、「遊郭編」の「上弦の陸」の妓夫太郎と堕姫もまた、瀕死状態の時に出会った「上弦の弍(当時は上弦の陸)」童磨の誘いに乗り、鬼化した過去を持っていた。
普通の人間を鬼にしてしまうなんて、“鬼の始祖”と言われる無惨の最強にして最悪の能力だと言わざるを得ない。
■爆薬で吹き飛んでも再生「瞬間再生」の能力
鬼の特性として、高い再生能力や回復力が挙げられるが、その中でも無惨は別格だった。
「柱稽古編」の終盤では、産屋敷邸を舞台に無惨と鬼殺隊の柱たちの直接対決が描かれたが、そこで見せた無惨の再生能力は圧倒的で驚かされた。
当主・産屋敷耀哉が仕組んだ罠によって屋敷全体の大爆発に巻き込まれた無惨は、四肢が吹き飛び、表皮も剥がれた状態になる。だが、みるみるうちに手足が生え、皮膚だけでなく髪の毛も瞬時に再生するのだ。
建物が木っ端微塵になるような大きな爆発に巻き込まれても、あっという間に再生するとは、まさに「瞬間再生」と言ったところだろうか。
作中ではこれまでも、腕を切り落とされた鬼の腕が即座に生えたり、首の皮一枚になっても再生するなど、鬼の驚異的な回復力は幾度も描かれていた。だが、無惨のそれは、他の鬼とは比較にならないレベルなのである。
「無限列車編」で死闘を繰り広げた猗窩座と杏寿郎の死闘では、お互い深手を負ったものの、退避する猗窩座はみるみるうちに体が再生し、一方で杏寿郎は命を落としてしまう。このあまりに理不尽な差に対し、憤怒した炭治郎の「傷だって簡単には塞がらない!! 失った手足が戻ることもない!!」という悲痛な叫びは涙なしでは見られない。
「太陽」という圧倒的な弱点はあるが、無惨を含めた鬼と人間の圧倒的な力の差の前に、「どのように倒すのだろう……」と絶望してしまった読者は多いのではないだろうか。
■子どもや妖艶な美女にも…「変幻自在」の能力
無惨といえば、容姿が変化するのも特徴的だ。浅草で炭治郎と邂逅した際には「月彦」という名の男性を装い、人間の妻子を連れていた。その後も、和装の妖艶な美女や、利発そうな幼い子どもなど、まったく異なる姿で登場している。
変身と言えば、禰󠄀豆子も大人の姿から小さな子どもほどの姿になったり、堕姫が髪や目の色を変えて人間の花魁に擬態したりと、他の鬼もある程度は容姿を変化させる能力を持つ。 だが、彼の変身はそれらとは次元が違う。配下の鬼でさえ、目の前にいるのが無惨本人だと気づけないほどに巧妙なのだ。声を聞いて初めて無惨であることを理解し、「姿も気配も以前と違う」「凄まじい精度の擬態」と評していた。
単なる外見の変化に留まらず、性別や年齢、気配までも完全に消し去ることができる無惨。この能力によって、彼は長年にわたり、鬼殺隊の追跡を逃れてきたのである。