
女性にとっての「髪」は美しさ、可愛らしさを表現するうえで非常に重要なチャームポイントの一つだ。それはドラマや映画で活躍する女優たちにとっても同様であり、ヘアスタイルはキャラクターをより魅力的に見せるための欠かせない要素である。
しかし、なかには役作りのため、トレードマークであった長い髪をばっさりと切り落とし、世間を驚かせた女優も少なくない。今回は、原作キャラクターを再現するため、髪を切るという大きな決断をした女優たちを紹介していこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■破天荒な少女から大人の女性へ…『はいからさんが通る』南野陽子
1975年に『週刊少女フレンド』(講談社)にて連載された大和和紀さんの『はいからさんが通る』は、大正時代の日本を舞台に、天真爛漫なヒロイン・花村紅緒が繰り広げる恋愛模様を描いたラブコメ作品だ。
原作は人気を博し、アニメ、映画、舞台とさまざまなメディアミックスが展開された。そのなかでも今回紹介したいのが、1987年に公開された実写映画版でヒロイン・紅緒を演じた南野陽子さんの印象的なエピソードだ。
当時、トップアイドルとして活躍していた南野さんは、清楚で可憐なビジュアルはそのままに、自由奔放なヒロイン・紅緒を持ち前の演技力で体現した。
物語序盤は、阿部寛さん演じる許婚の将校・伊集院忍との甘酸っぱくもほのぼのとしたコミカルな恋愛模様が描かれているのだが、忍がシベリアへと出兵したことで物語は一変する。
これまでは恋にときめく乙女だった紅緒。だが、忍が戦死した報せを受け、彼の妻であることをより強く自覚して大人の女性へと成長していくのだ。
この際、紅緒は長かった髪を切り落とすことで決意をあらわにするのだが、南野さんはウィッグなどに頼ることなく実際に自身の髪を切り落とし、このシーンを再現した。
白い喪服にボブカットという姿で葬儀の場に姿を現した紅緒は、これまでの無邪気な姿ではなく、強い意志を持った大人の女性としての立ち振る舞いを見せ、登場人物たちはもちろん、観る者を圧倒した。
髪を切るという役作りへの熱意はもちろん、それをスイッチとして切り替わっていく紅緒の細かな心理の変化をも、南野さんは丁寧に演じきった。紅緒が押し殺した哀しみと、それでも前を向こうとする強い姿は、多くの観客の心を震わせたのである。
■原作愛があるからこその高い再現度『らんま1/2』新垣結衣
数々の名作ラブコメ作品を手掛けてきた漫画家・高橋留美子さん。なかでも格闘アクションの要素を色濃く描いた作品といえば、1987年より『週刊少年サンデー』(小学館)で連載された『らんま1/2』だろう。
水をかぶると女になってしまう特異体質の主人公を筆頭に、個性豊かなキャラクターが織りなす格闘ラブコメ作品で、2024年には30年以上の時を超え、再アニメ化を果たしている。
2011年に放送された実写ドラマでは、ある人気女優が役作りのために髪を切り、大きな話題を呼んだ。
その女優とは、ドラマ、映画、さらには歌手としても活躍している新垣結衣さんだ。
新垣さんが演じたのは、原作のメインヒロインである道場の娘・天道あかねだ。原作では主人公・早乙女乱馬の許嫁として登場するが、ドラマ版では彼女が主人公となり物語が展開された。
驚くべきことに、新垣さんはこの役のオファーを受けると、役作りのために迷うことなく自身の美しいロングヘアを25cmも切り落としてしまった。
実は新垣さんは、もともと原作の大ファンであったという。“(髪の長さは)漫画版に合わせるか、アニメ版に合わせるか”と、ディープな知識を披露し、スタッフを驚かせたというエピソードも明かされていた。
新垣さん自身、ショートヘアは中学生以来だったそうだが、その姿は愛らしくも凛とした清楚さ、強さを感じらさせ、まさに原作の天道あかねそのものであった。
自身が深くのめり込んだ作品であることから、撮影には終始楽しみながら臨んでいたという。女優としての姿勢もさることながら、原作ファンとしての熱量にも圧倒されてしまうエピソードである。