■陵南戦:勝負を決めた値千金の3Pシュート
インターハイ神奈川県予選決勝リーグ、湘北と陵南高校による最終決戦。試合終了まで残り2分18秒、三井がスタミナ切れで倒れ込み、代わってコートに立ったのはやはり木暮だった。
残り1分を切る頃、田岡監督は池上亮二を呼びつけ「赤木・流川にボールが渡ったら必ずWチームにいけ 木暮はある程度離しといていい!!」と指示を出す。この時点で、田岡監督は木暮を得点源と見なしていなかった。だが、この判断が致命的なミスとなる。
桜木が池上のパスをブロック、すると池上は指示通り流川楓に寄せる。だが、桜木は流川にパスを出さず、ボールはノーマークの木暮へ。次の瞬間、「ビッ」という音とともに3Pシュートが放たれた。ボールは鮮やかにリングを射抜き、スコアを4点差に広げた。試合終盤、勝負を決めた値千金の一撃であった。
加えて言うなら、以前の陵南との練習試合でも、木暮は流川に意識が集まった隙を突いて連続シュートを沈め、さらにディフェンスに定評のある池上を相手に逆転の3Pシュートも決めている。
まさに木暮は「陵南キラー」。なぜ田岡監督は、木暮をフリーにする指示を下したのか……。最終的に「あいつも3年間がんばってきた男なんだ 侮ってはいけなかった」と自らの判断を悔やむこととなった。
三井が復帰したことで、3年生でありながらスタメンを外されるという立場に追い込まれた木暮。普通なら腐ってしまってもおかしくない状況だったように思う。
それでも彼は決して諦めず、地道に練習を重ね続けた。そしてスタメンにトラブルが起これば交代し、控えであっても「シックスマン」としてここ一番で確実に結果を残してきた。
派手なダンクや圧倒的な個人技はなくとも、愚直に役割を果たし続ける誠実さと、そこから生まれる勝負強さ。まさにその姿こそが、木暮公延というキャラクターがファンから長く愛されてきた理由なのだろう。