
1990年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、バスケットボール漫画の金字塔、井上雄彦氏の『SLAM DUNK』。主人公・桜木花道をはじめ、個性豊かなキャラクターも、本作の魅力を語る上では外せない要素だ。
今回、クローズアップしたいのが、湘北高校バスケ部の副キャプテン、“メガネ君”こと木暮公延だ。温厚で謙虚な人柄でチームをまとめ上げる姿は、まさに縁の下の力持ちと呼ぶにふさわしい。
だが実は、木暮の真価はそれだけではない。スタメンにトラブルがあれば交代で入り、落ち着いたプレーで確実に役割を果たす「シックスマン」としての存在感。そして、ときに観る者の想像を超える勝負強さを見せてきた。
今回は、そんな“実はスゴかった”、木暮のプレイヤーとしての魅力に迫ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■翔陽戦:湘北を支えた粘りのディフェンス
インターハイ神奈川県予選決勝リーグ進出をかけた、県内屈指の強豪・翔陽高校との激闘。この試合でも木暮は驚くべき活躍を見せている。
試合終了まで残り2分30秒。スタミナ切れの三井寿に代わりコートに立った木暮。直後には桜木が5ファウルで退場し、まさにチームの命運を背負う重い時間帯を任されることになる。
原作漫画では「県No.2翔陽のプライドをかけた猛攻に最後まで耐えぬいた」とナレーションベースで描かれていたが、実はアニメでは、その奮闘がより具体的に描かれている。
クライマックス、藤真健司が放ったのは逆転を狙った3Pラインからのフェイダウェイシュート。藤真のシュートといえばリリースが早く、しかもサウスポー。その前には、宮城リョータもタイミングを外され得点を許している。
しかし木暮は「今まで休んでいた分 オレだって飛べる!」と、渾身のジャンプブロック。わずかに指先が触れボールはリングに弾かれる。そして、そのこぼれ球を赤木剛憲、角田悟が繋ぎ、湘北ボールにした。
派手さこそないが、確実に相手の流れを断ち切ったこの木暮のブロックは、まさに勝敗を左右したビッグプレーだった。その後も木暮は粘り強くディフェンスを続け、湘北が試合を制するうえで欠かせない役割を果たしたのである。
■劇場版・緑風戦:キャプテンとして覚醒した木暮
1995年公開の劇場版第3弾『スラムダンク 湘北最大の危機!燃えろ桜木花道』では、木暮がゲームキャプテンとして大きな存在感を示していた。
舞台は、インターハイ神奈川県予選決勝リーグ初戦で海南大附属高校に敗れた直後の湘北。対戦相手は、アメリカ帰りのハーフ・マイケル沖田を主将に据え、全国から有力選手を集めた新鋭・緑風高校だった。豪華な設備を誇り、“お金持ちの私立”と呼ばれるほどの新設校である。
この試合、海南戦で負傷した赤木に代わり、木暮はゲームキャプテンとしてスタメン出場。試合前には緊張を隠せなかったが、海南戦の負けを引きずる仲間たちが本調子を欠く中で堅実にシュートを沈め、さらに「もう一本いくぞ!」と声をかけるなどリーダーシップを発揮する。
やがてフリースローのチャンスを得るが惜しくも外れ、こぼれ球に飛び込んだ際に木暮は脳しんとうで気を失ってしまう。だが、その必死のプレーはチームの士気を大きく引き上げるのだった。
その姿に、相手チーム・緑風の大船監督は「あの木暮という選手ですよ 湘北を目覚めさせたのは 安西先生もいい選手を育てたものだ」と称賛している。この試合、木暮は赤木に代わり、ゲームキャプテンとしての責任感と気迫で湘北を勝利へ導いたのだった。