■未熟ゆえに崩れていく体…『風の谷のナウシカ』溶けていく巨神兵
ジブリ作品の中でも、今なお根強い人気を誇るのが『風の谷のナウシカ』(1984年公開)である。宮﨑駿監督による全7巻の物語のうち、序盤にあたる約2巻部分までをアニメ化した本作は、「火の七日間」という壮絶な戦争ののち、菌類の森「腐海」と共存して生きる人間たちの姿が描かれている。
マスクなしでは呼吸もできないほど汚染された世界で、腐海に住む蟲たちに怯えながら暮らす人々。大きな昆虫のような姿をした蟲たちは、実際に遭遇したら腰が抜けてしまいそうなほど不気味だ。
そんな蟲をも凌ぐ怖さだったのが、巨神兵だ。兵器として作られた巨神兵は、かつて「火の七日間」で世界を焼き尽くした張本人で、巨大な人型のロボットのような見た目をしている
物語は、アスベルの住むペジテ市の地下から、一体だけ生き残っていた巨神兵が掘り起こされたことで大きく動き出す。
クシャナが率いるトルメキア軍によって強奪された巨神兵は、輸送中に風の谷へ墜落。クシャナは風の谷で巨神兵の蘇生を試みるが、風の谷へ王蟲の群れが迫った際、不完全な状態で巨神兵を使ってしまった。
まだ完全に再生していなかった巨神兵は、体がドロドロと崩れ落ちていくおぞましい姿
で登場する。そして、王蟲の群れへ光線を放つも、すぐに力尽き、絶命してしまうのだ。その壮絶な姿は、クシャナの部下・クロトワが「腐ってやがる 早すぎたんだ」と思わず口にするほどだった。
肉が腐り、溶けながら崩れていく生々しい巨神兵。それでも巨大な王蟲の群れをたやすく吹き飛ばす光線を口から放つ禍々しい姿は、多くの視聴者に恐怖を与えた。
ちなみに、このシーンの作画を担当したのは『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる庵野秀明さんである。巨神兵のデザインそのものも庵野さんが手がけたそうで、当時から類稀なる才能を持っていたことがうかがえる名シーンだ。
単に恐ろしいだけでなく、今や日本を牽引するアニメ監督の1人となった庵野さんの、貴重なキャリア初期の時代を垣間見ることができる点でも、ファンにはたまらないシーンとなっている。
見た目が怖かったり、美しい作画による描写とのギャップが恐怖を煽ったりと、さまざまな角度から強烈なインパクトを残したこれらのシーンたち。怖いだけでなく、物語において重要なシーンであることも多かった。
ぜひこの機会に、今回紹介したシーンにも注目しながら作品を見返してみてはいかがだろうか。これまでとはまた違った目線で、物語を楽しむことができるかもしれない。