■若き日のケンシロウの二度の完敗「シン戦」「シュウ戦」
物語序盤、ケンシロウは北斗神拳伝承者でありながら、二度もあっさりと負けてしまっている。
一度目は、回想シーンで描かれた南斗孤鷲拳のシンとの戦いだ。ケンシロウが恋人・ユリアと安住の地を求め、旅立とうとしていた矢先、シンが現れる。
「力こそが正義」と説くシンに対し、北斗と南斗の争いを避けようとするケンシロウだったが、だがその優しさが仇となる。
シンの奥義「南斗獄屠拳」を受け、ケンシロウは両肘・両ひざを深く斬られて戦闘不能に陥る。地面に突っ伏したケンシロウはそのままシンに顔を足で踏みつけられ、胸に七つの傷を刻まれ、目の前でユリアを奪い去られてしまった。
拳法での敗北だけでなく、愛する人まで奪われてしまったケンシロウ。心に深い傷を残した完敗であった。
二度目は、少年時代に遡る。ラオウに連れられ北斗と南斗の他流試合「南斗十人組手」に挑んだ時のこと。
九人目まで倒したケンシロウだが、最後の相手に名乗り出たのは若きころのシュウであった。飛び蹴りを素早くかわしたシュウは体に突きを食らわせ、たった一撃でケンシロウに勝利する。
掟により、敗者であるケンシロウは処刑される運命にあった。だが、それを遮ったのはシュウだった。「この少年はだれよりも強く激しく光る可能性を秘めている」と言い、その代わりに「おれの光をくれてやる!!」と、自らの両目を潰してその場を収めてしまった。
試合を仕切っていたサウザーはケンシロウを仕留めるため、最後の十人目には彼よりも強い相手であるシュウを用意したのかもしれない。だが、シュウは自らの光を差し出してでも、未来ある若者の光を摘むことを拒んだのである。
この時点でケンシロウは、心技体においてシュウには遠く及ばなかったと言える。
「北斗神拳は無敵だ」という言葉とは裏腹に、意外とやられてしまっている伝承者のケンシロウ。だが、シュウは例外として、敗北を糧にきっちりとリベンジを果たしているのはさすがである。
個人的には、徹底した悪役で読者に恐怖を与えたサウザーとの初戦がショッキングだった。あのラオウと互角の戦いを繰り広げた後だけに、あんなに一方的にやられたうえ、捕らわれるという展開……なんとも衝撃敵だった。だが、これらの敗北と、仲間たちの犠牲こそが、ケンシロウを成長させたともいえるだろう。
2026年に公開される新作アニメでは、これらの名場面がどのように描かれるのだろうか。その続報から目が離せない。