デュ・バリー伯夫人にニコラス大尉、ローアン大司教も…『ベルサイユのばら』マリー・アントワネットを窮地に追い込んだ悪役たちの画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第7巻(フェアベル)

 池田理代子氏の名作『ベルサイユのばら』には、数多くの魅力的なキャラクターが登場する。その中でも豪華絢爛なドレスを優雅に着こなし、読者たちにとって一躍“憧れの存在”となったのが、フランス王妃であるマリー・アントワネットだ。

 しかし、その華やかな姿とは裏腹に、彼女は王妃という立場ゆえ、作中では多くの人物から嫉妬や悪意を向けられ、さまざまな苦難に見舞われている。

 印象的なのが、アントワネットに取り入って国費を浪費させたポリニャック夫人や、豪華な首飾りを巡って詐欺事件を起こしたジャンヌ・バロアだろう。

 だが、アントワネットを苦しめたキャラクターは彼女たちだけではない。今回は、アントワネットを窮地に追い込み、苦しめたキャラクターたちを紹介していく。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■幼いアントワネットを最初に苦しめた人物「デュ・バリー伯夫人」

 まずは、アントワネットがフランスに嫁いで間もない王太子妃時代に、彼女の前に立ちはだかった相手、デュ・バリー伯夫人である。デュ・バリー伯夫人は金銭的に恵まれない境遇でありながら、その美貌をもって国王ルイ15世の公妾(公式な愛人)という地位を手に入れた人物だ。

 アントワネットはそんなデュ・バリー伯夫人の振る舞いや生き方を軽蔑し、強い嫌悪感を抱いていた。そのため、公の場では彼女の存在を徹底的に無視し、近くにいても決して声を掛けようとはしなかったのである。この態度に怒った夫人は国王に直訴し、意地でもアントワネットが自分に声をかけるよう圧力をかけるのであった。

 やがて2人の対立は、アントワネットの母国オーストリアとフランスの外交問題にまで発展してしまう。結局はアントワネットが折れる形で「きょうは……ベ…ルサイユはたいへんな人ですこと!」と声を掛け、デュ・バリー伯夫人の勝利に終わった。

 アントワネットは悔しさから涙を流すことになったが、この経験は、まだ幼い彼女が宮廷の人間関係や政治の厳しさを学ぶきっかけとなるとともに、王妃としての自覚を強くさせたのは間違いないだろう。

 その後、国王が天然痘によって死去すると、立場を失ったデュ・バリー伯夫人はすべての権力を失い、ベルサイユから追放される運命を辿ることとなる。

■ジャンヌとともに首飾り事件を起こした「ニコラス・ド・ラモット大尉」

 ニコラス・ド・ラモット大尉は、主人公・オスカルが率いる近衛連隊の士官であり、“首飾り事件”を起こす首謀者、ジャンヌ・バロアの夫である。『ベルサイユのばら』における悪役といえばジャンヌの印象が強いが、このニコラスの協力がなければ、この歴史的な悪事は起きなかったかもしれない。

 ニコラスはジャンヌを心配して訪ねてきた妹・ロザリーを鞭で叩いて追い返すなど、冷徹な性格の持ち主だ。

 彼はジャンヌにベタ惚れしており、彼女の意のままに動く。その欲望を叶えるためならいかなる悪事にも手を染めた。

 ニコラスは、ジャンヌを貴族として育てたブーレンビリエ侯爵夫人を殺害して財産を奪い、さらにはアントワネットの名を悪用してローアン大司教をだまし、高額な首飾りを奪う“首飾り事件”に協力する。この事件はアントワネットの評価を失墜させ、フランス革命の一因にもなった。

 その後、ニコラスはジャンヌと共に捕まるのだが、何者かの協力によって脱獄・逃亡し、追ってきたオスカルと対決。その戦闘中、オスカルを狙ったジャンヌの剣が誤ってニコラスを貫き、さらにジャンヌ自身もテラスから転落して絶命するという悲劇的な最期を迎えている。

 ジャンヌのことさえ愛さなければ、もっとまっとうな人生を送れたであろうニコラス。だが、愛する人の手によって亡くなったのは彼らしい最期だったのかもしれない。

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