ボークで片づけないで…チビッコが憧れた野球漫画の「トンデモ投法」  「マネしたら目が回った…」の画像
原作:遠崎史朗、作画:中島徳博『アストロ球団 ブラック球団編』(太田出版)

 最近の野球漫画の多くは、現実に近い設定や世界観で描かれている印象がある。戦略やトレーニング方法などを深堀りし、プロを目指すための参考書にもできそうなほどだ。

 一方、昭和から平成初期にかけては、「必殺技」が登場する野球漫画も多かった。「魔球」がその中心だったが、中には漫画ならではの「オリジナル投球」も存在した。厳密に言えば、ルール的にはアウトかもしれないが、豪快な投法によって三振を量産していく……そんな姿に当時の子どもたちは憧れたものだ。

 今回は、子ども時代に衝撃を受けた、野球漫画の「トンデモ投法」を振り返ってみたい。

■まるでバレーボールのスパイク…

 最初に紹介したいのが、原作:遠崎史朗さん、作画:中島徳博さんによる『アストロ球団』の主人公・宇野球一が放つ「スカイラブ投法」である。

 これはまず、ボールを右手に持ちながら左投げのスタイルで構える。そこから右足を高く上げて、その右足を左へ180度回転。同時に右手のボールを左手のほうに浮かし、バレーボールのスパイクのごとく左手でボールを打ち込むといった投法だ。

 この投法で投げられたボールは、相手のバットを破壊するだけの威力がある。打ち返すのは困難だが、肉体にかなりの負担を掛けてしまう投球でもあり、1日に何度も投げられるわけではない。リスクもある必殺技ということだ。

 筆者は昔マネしてみたことがあるが、実際にやってみるとかなり難しい……。バレーボールのスパイクに近いものの、ボールが小さくてうまく打ち込むことができないからだ。しかも、狙ったところにボールが飛んでいかず、苦戦した覚えがある

 ただ、この投法は投球動作からボールを持ち替えているので、ルール上はボークではある。

■まさかの“死人が出る”投法!?

 次も『アストロ球団』に登場した投法で、「殺人L字投法」だ。名前の時点で危なすぎるものがある。

 これは、ただスローボールを投げるというもの。しかし、実はこの球にはものすごい回転がかかっており、バットで触れようものなら、球がバットに絡みつくように打者の体を登っていき、頭部に命中。最悪、死に至るという投法だ。

 しかも球のすさまじい回転力によって、バッターはバッターボックスから全く動けなくなってしまう。もはや完全に「魔球」であり、投法であるが、マネしようと思っても絶対にできない。

 人殺しを目的としている時点であまりにも現実離れしているが、仮に現実の野球で使用しても、明らかに頭部を狙った投球なので、危険球と見なされてしまうかもしれない。

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