■メドゥサの盾から逃れるために視力を封じた『聖闘士星矢』ドラゴン紫龍

 1985年より連載が開始された車田正美氏の『聖闘士星矢』は、少年たちが聖衣(クロス)を纏って聖闘士(セイント)となり、小宇宙(コスモ)を燃やしてバトルを繰り広げる名作だ。

 本作では、この聖闘士たちが体の一部を犠牲にして戦うシーンがたびたび登場している。なかでもインパクトが大きかったのが、青銅聖闘士の一人であるドラゴン紫龍と白銀聖闘士のアルゴルが戦うシーンである。

 アルゴルは見た者を石化させる「メデュサの盾」を武器として戦う。これにより盾を見てしまった仲間の青銅聖闘士であるアンドロメダ瞬やキグナス氷河は次々に石化し、動けなくなってしまった。

 そんな中、残った紫龍は目隠しをしてアルゴルと戦うものの、左半身を石にされてしまい万事休すに……。目隠しをしても意味がないと悟った紫龍は、なんと自ら両目にダメージを与えて視力を封じてアルゴルと戦い、なんとか勝利するのであった。

 この戦いは、ギリシャ神話に登場するメドゥーサをモチーフとしていることが分かる。ギリシャ神話ではペルセウスが盾を鏡にしてメドゥーサを倒すのだが、『聖闘士星矢』では紫龍が自ら目にダメージを与えて勝利するという、さらに壮絶な戦いを繰り広げた。

 このシーン以降、紫龍は視力を封じることも多く、戦いのためなら身を挺する熱きキャラに成長していくのだ。

 

 昭和の『ジャンプ』漫画に登場した、かなりぶっ飛んだ作戦の数々。どの作戦もかなり痛々しいものだったが、それほど相手を倒したいという強い思いが感じられ、彼らなりの正義を全うするためにおこなったことが分かる。

 いずれも一般人には絶対に真似できない命懸けの戦術だ。しかしそうした常識外れの展開こそが、少年漫画の醍醐味であり、今も昔も読者を夢中にさせるのだろう。

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