■ギャルが辿りついた真実の愛『天使の恋』佐々木希

 2009年に公開された映画『天使の恋』は、ケータイ小説ブームを牽引したsinさん原作のラブストーリー。

 主演を務めたのは、当時モデル・グラビアと幅広く活躍していた佐々木希さんだ。同年、ロッテのガム『Fit’s』のCMで披露したキュートなダンスで「時の人」となった彼女が映画初主演を果たした、記念すべき一作だ。

 佐々木さんが演じたのは、茶髪にチェックのミニスカート、黒ソックスにローファーという、まさに“イケてる女子高生”の小澤理央。だが、その華やかな見た目とは裏腹に「金がすべて」と割り切っていじめや援助交際にも手を染めるなど、心の奥に深い孤独と傷を抱える複雑なキャラクターであった。

 そんな理央が変わるきっかけとなるのが、18歳年上の大学講師・小澤光輝(谷原章介さん)との出会いだ。彼とのかかわりを通じて理央は初めて真実の愛を知り、少しずつ人間らしい感情を取り戻していく。

 印象的だったのが、序盤に描かれた駅での別れのシーン。向かいのホームに立つ光輝に向かって、理央は「先生ー!」と大声で呼びかけ、人目もはばからず手を振り続ける。派手な見た目の理央の内にある、ひたむきで純粋な恋心を浮かび上がらせる名場面だ。

 やがて光輝も理央の真っ直ぐな思いに心を動かされていくが、彼には彼女の気持ちを受け止めきれない理由があり……物語は、2人がある“重大な決断”を下す終盤へと進んでいく。

 佐々木さんは「理央に共感できる部分も多かった」と語っており、ギャルというビジュアルの枠を超えて、揺れ動く内面を繊細に演じきった。まさに女優・佐々木希の原点と呼ぶにふさわしい作品だ。

 

 金髪や茶髪、濃いメイクにヤンチャな制服姿。今ではなかなかお目にかかれない名女優たちのギャル姿には、当時ならではの大胆さとどこか初々しさが同居していた。

 そのビジュアルのインパクトに目を奪われつつも、スクリーンから溢れ出ていたのは、間違いなく彼女たちの女優としての才能と表現力だった。振り返ってみると、あの「ギャル役」には、のちに誰もが認めることになる彼女たちの女優としての輝きがすでにしっかりと刻まれていたように思う。

  1. 1
  2. 2
  3. 3