■哀しき過去を背負った妖艶な敵『侍戦隊シンケンジャー』朴璐美
2009年放送の『侍戦隊シンケンジャー』に登場する外道衆の幹部・薄皮太夫。その妖しく艶やかな声を演じたのは、数々の名作アニメで主演を務めてきた実力派声優・朴璐美さんだ。
三味線を手に不気味な旋律を奏でながら登場する薄皮太夫は、華やかな姿とは裏腹に、深い哀しみを内包したシリーズ屈指の異色キャラクターだった。外道衆の紅一点として妖艶な存在感を放つ彼女は、かつては人間で「薄雪」という名の花魁であり、哀しき過去を背負っている。
第25話「夢世界」では、その“人間だった頃”の薄雪を、朴さん自らが“顔出し”で演じた。このエピソードでは、愛する男性に裏切られ、絶望の果てにたいまつを手に宴席へ乱入した薄雪が、多くの命を奪ってしまった壮絶な過去が描かれている。
声と実写の両方を朴さんが演じたからこそ、薄皮太夫という存在に圧倒的な深みと説得力が生まれていたように感じる。四方を炎に包まれる花魁姿の朴さんの情念こもる演技は、『スーパー戦隊』シリーズの歴史に残る名場面として、今も語り継がれるほどだ。
なお、同年、朴さんはアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』で、主人公のエドワード・エルリック役も担当していた。
真っ直ぐで熱血な少年・エドと、情念に飲み込まれた妖艶な悪役・薄皮太夫。正反対の役柄を同時期に演じていただけでなく、さらには顔出し出演までと、朴さんの演技の幅と圧倒的な表現力には脱帽してしまう。
『スーパー戦隊』シリーズには毎回のように個性豊かな悪の女性幹部が登場するが、そのキャスティングには驚かされることが多い。のちの報道番組の顔、グラビア界のスター、実力派声優……と、彼女たちの持つ意外性も本シリーズの“裏の見どころ”といえるだろう。
今後も、そんな驚きの女性幹部が登場することを期待したい。