
1955年に創刊され、今年で70周年を迎える少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)。過去最高発行部数255万部を記録した1993年末〜1994年にかけての「りぼん黄金期」には、吉住渉氏の『ママレード・ボーイ』や小花美穂氏の『こどものおもちゃ』を筆頭として、アニメ化もされた人気作が誌面に並ぶという豪華なラインナップだった。
また、『なかよし』(講談社)でも『美少女戦士セーラームーン』や『怪盗セイント・テール』、『魔法騎士レイアース』など、アニメ化された人気作が同時に連載され、この時期はまさに「少女漫画雑誌の黄金期」だったといえるだろう。
そして、1977年創刊と後発でありながらも『りぼん』『なかよし』と並んで、三大小中学生向け少女漫画雑誌の一つだった『ちゃお』(小学館)。本誌の1994年当時の連載ラインナップを見ると、この雑誌もまた、他誌に負けないほど少女たちを夢中にさせた人気作が多く並んでいた。今回は、そんな1994年の『ちゃお』連載ラインナップを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■アニメ化もされた『ちゃお』の変身ヒロイン漫画
『美少女戦士セーラームーン』の人気もあって、「普通の少女が変身して敵と戦う」というジャンルの作品が多かったこの時期。
『ちゃお』でもメディアミックスプロジェクトとして、1994年から1996年にかけて原作:富田祐弘氏、作画:谷沢直氏による『ウェディングピーチ』が連載されていた。本作の原作を務めた富田氏は『セーラームーン』の初代シリーズ構成およびメイン脚本担当でもあるが、企画自体は1988年以前より温めていたものだったという。
天使と悪魔との戦いを描いている本作。この作品が最も少女たちの心をときめかせた理由は、モチーフが当時の女の子の永遠の憧れともいうべき「花嫁」だったことだろう。 ウェディングピーチたちは変身すると防護形態を兼ねたウェディングドレス姿となり、そこからさらに「お色直し」として攻撃形態の戦闘服へと変身する。
また戦いの最中にもブーケや乾杯など、結婚式を意識したアイテムが用いられている。少女だった当時はなんの疑問も抱かなかったものの、攻撃の際の「ウェディング結納返し!」というセリフは大人になった今なら少しクスッと笑ってしまう。
さらに、実は主人公の意中の相手が敵である悪魔族だったという展開は、『ロミオとジュリエット』のようでありワクワクしたものだ。同作は『愛天使伝説ウェディングピーチ』のタイトルで放送されたアニメも大ヒットした。
『ウェディングピーチ』のように、主人公の少女が憧れの姿に変身するというのは変身少女ものの醍醐味だろう。そんななか、同じ変身少女ものでも、そのセオリーを逆手にとって少し変わった姿に変身したヒロインがいる。それが1994年から1995年に渡って連載された池田多恵子氏による『とんでぶーりん』だ。
普通の女の子・国分果林が、願いを叶える108個の真珠を集めるために変身するのは、ピンクのブタ「愛と正義のピッグガール・ぶーりん」。果林は、正体がバレてしまうと一生ぶーりんのまま元の姿に戻れなくなってしまうことに加えて、恥ずかしいぶーりんの姿になってしまうことにコンプレックスを持っている。しかし、意中の男の子は果林よりむしろぶーりんに惹かれてしまうという展開が学園でのドタバタとともに繰り広げられる。
よく考えるとなんともせつない、普通の変身少女ものとは打って変わった苦労のある物語だが、ぶーりんの愛らしさは見ているだけで応援したくなるもの。こちらもアニメが放送され、土曜の夕方の食卓を彩っていた。