■勇敢で明るく、さりげないセリフも女子キャラに人気があった『ピーターパンの冒険』ピーターパン
1904年に発表されたジェームス・マシュー・バリーの小説を原作とした『ピーターパンの冒険』は、1989年に41話に渡って放送された。1953年にはウォルト・ディズニーによってアニメ映画化がされ、そのイメージが強い人も多いかもしれない。
本作でのイケメンキャラといえば、もちろん「ピーターパン」だ。彼は夢の国・ネバーランドに住む冒険が好きなやんちゃな少年だ。子どもっぽいキャラかと思いきや、ウェンディをはじめとする子どもたちがピンチになった際は、いつも絶妙のタイミングで助けに来てくれる。
またピーターパンは女の子に対する接し方が絶妙にうまい。たとえばウェンディがネバーランドへ行こうか迷っているとき「ウェンディ、お願いだよ。僕の友達にお話を聞かせてあげてよ」「ウェンディ、君じゃなきゃだめなんだ! みんな待ってるんだ!」と言い、乙女心をくすぐっている。
さらに永遠のライバル・フック船長やその手下と戦うときは、少年から戦士への顔つきへと変わる。パワーで立ち向かうだけでなく、華麗な身のこなしで敵を次々となぎ倒していく。敵を欺く作戦も見事で、その余裕のある行動に妖精のティンクはいつもメロメロで、時にウェンディに嫉妬する様子も見せていた。
ピーターパンは『世界名作劇場』のなかでも、女子キャラから圧倒的に愛されたキャラともいえるだろう。少年らしい可愛さと戦士のような顔をあわせ持つピーターパンが自分のそばにいてくれたら……そんなふうについ想像した視聴者は少なくなかっただろう。
『世界名作劇場』には、魅力的なイケメンキャラが多く登場していた。自身で道を切り開きヒロインを守り抜くマリウス、不遇な運命を背負いながらも信念を貫くアルフレド、そして、明るく頼りがいのあるピーターパン。三者三様ながらも、彼らはいつでも前向きで、視聴者に勇気を与えてくれた存在である。
現実にこんな人物がいるかと言われれば、なかなか難しいかもしれない。だが、少しでも彼らのように前向きで誰かに優しさを届けられる人間になれたら……そんな思いを抱かせてくれるのも、『世界名作劇場』という番組の魅力だったように思う。