「悪しき存在でもこれはムゴイ…」知れば涙『鬼滅の刃』鬼となった人間たちの「悲しすぎる理由」の画像
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 吾峠呼世晴氏の漫画が原作で、三部作で公開されるアニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』の『第一章』の公開日が7月18日となることが発表された。最終章の幕開けとなる『無限城編』では、鬼舞辻無惨に最も近い存在である上弦の鬼3名とのバトルが描かれていく。

 2019年よりアニメ化されてきた『鬼滅の刃』ではここに至るまで様々な戦いが描かれてきた。劇場版ではいよいよ無惨の根城に近づき戦いが佳境になるということで、どのような映像で描かれるのかファンの期待も高まっている。

 『鬼滅の刃』では基本的に「鬼」が人間の脅威として描かれるが、その鬼側にもさまざまなドラマがあるのが『鬼滅の刃』の魅力の一つだ。敵とはいえ、中にはもともと自ら望んで鬼になろうとしていなかったものや、鬼になったことを後悔しているキャラもおり、戦い後にそれらが明かされる場面は涙なくして読めないものばかり。

 今回は、鬼になってしまったキャラが持つ、ついこちらも同情してしまいそうな悲しい事情について振り返りたい。

※本記事には作品の内容を含みます

■無惨の甘い言葉に誘われて鬼となったキャラ

 まずは、炭治郎らが物語の序盤に浅草で出会った特殊な鬼である珠世。

 アニメ『柱稽古編』の最終話で明かされた彼女の人間時代と、鬼になった理由は悲しいものだった。珠世は人間だった頃は病に冒され余命いくばくもなく、子どもが大人になるのを見届けたいという思いから無惨の口車に乗って鬼となったのだ。そしてその後、自らの手で最愛の息子と夫を食い殺してしまう。

 珠世は、鬼となったことで自暴自棄になり、さらに大勢の人間を殺して食べてしまった過去があり、そのことについて何百年も罪の意識を感じていた。『柱稽古編』では無惨を抑えながら「そんなことがわかっていれば私は鬼になどならなかった!!」と叫んでおり、彼女は無惨の甘言に騙されたのだということが推測できる。

 珠世が無惨に鬼にされたのは数百年も前のこと。それ以降、無惨の支配の呪いを自力で解除して単独行動をおこなってきた。感情をあまり表に出さず虎視眈々と無惨を倒す機会を伺ってきた彼女と無惨には、このような長い因縁があったのだ。

 また、作中で最初に登場した十二鬼月・下弦の伍の累も鬼になった悲しい経緯を持つキャラ。彼は人間だったときは生まれつき身体が弱く、ほとんど寝たきりの状態で両親と暮らしていた。

 元気になりたかった彼は無惨からの誘いに乗って自ら鬼になったが、鬼は人間を食べなければ生きていけない。人を喰い殺している現場を両親に目撃されたことで父親から殺されそうになってしまい、激昂した累は逆に両親を殺してしまう。

 累は自分に刃を向ける父の姿を見て、親子の愛や絆はないのかと絶望したようだったが、累は実は父が、人喰い鬼となった息子の罪をともに背負って一緒に死のうとしていたのだと知る。

 そしてその後、一人になった累は家族に対する偏った憧れを持ち、鬼を偽りの「家族」にして群れを作って暮らすようになる。歪んだ家族像を持っている累だが、もともと彼はきちんと両親に愛されていたのだ。

 その絆を壊した原因は間違いなく無惨にあるといっていい。無惨の口車は、彼らの人間らしい願いを嘲笑うかのようだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3