
2005年1月30日から放送開始となった『仮面ライダー響鬼 』(テレビ朝日系)は、今年2025年で放送20周年を迎えた。
平成仮面ライダーシリーズの第6作目として誕生した本作は、「和」ベースの世界観、「鬼」の容姿を持つ独特のヒーロー、「楽器」をモチーフとした武器、多数のバージョンを持つオープニングテーマ「輝(かがやき)」、番組前半と後半でガラリと変わる「作風」など、異色尽くしの作品だった。
雄大な自然の中で荒ぶる敵を鎮め、郷愁を誘う下町でのほのぼのとした日常が描かれ、悩みながらも成長する少年の姿とそれを見守る大人たち……と、他のライダー作品にはない「癒し」と「わびさび」が満ちあふれていた。
そんな『仮面ライダー響鬼』に魅了され、エンディングのロケ地を「聖地巡礼」するほどハマった筆者が、本作の魅力についてあらためて掘り下げてみたい。
※本記事は作品の核心部分の内容を含みます。
■憧れのヒーローが子どもの成長を見守る良質ドラマ!
『仮面ライダー響鬼』は、修行により自身の肉体を“鬼”に変容させる能力を得た「音撃戦士」たちが、その超人的な力で人々を襲う魔化魍(まかもう)を鎮めるため、楽器を模した「音撃武器」で清める(戦う)物語だ。
“響鬼”こと日高仁志(コードネーム・ヒビキ)はそのひとりだが、彼の戦闘スタイルは衝撃的だった。
まず変身するのに用いるのは、定番のライダーベルトではなく、楽器の調律などで使う「音叉」。そして巨大な魔化魍に接近し、敵の体に直接「太鼓」を取りつけて両手の「バチ」で激しく連打し、魔化魍を撃破するのだ。
正直、防御もままならない捨て身の超肉弾戦であり、筆者が初の“清め”のシーンを見たときは「とんでもないライダーが始まった」とテレビに向かってツッコんだものである。
そんな命知らずな戦い方をするヒビキの年齢は31歳。演じた細川茂樹さんの年齢は、当時仮面ライダーの“主人公”最年長の33歳だったため、ファンの間からは親しみを込めて「おっさんライダー」とも呼ばれていた。
平成ライダーから主演を務めるのは基本20代前半の若手俳優が多く、すでにベテラン俳優として活躍していた細川さんは、オファーが来た際に自分が受けると「一人、新人の出番がなくなる」と悩んだという。しかし、そのことをダウンタウンの浜田雅功さんに相談すると「ウチの番組でイジったるから絶対やれよ」と後押しされ、やることを決心したそうだ。結果として「細川ヒビキ」が大成功したのは、ファンの誰もが知るところだろう。
ヒーローとして成熟したヒビキは、もうひとりの主人公・安達明日夢という14歳の少年にとっては憧れの存在でもある。そんな明日夢をむげにしたり頭ごなしに叱ったりするのではなく、対話を試みるというカッコイイ大人のヒーローを、細川さんが見事に演じきった。
■大人同士の師弟関係や先輩ライダーなども魅力
物語後半では、ヒビキと明日夢の師弟関係が描かれるが、ザンキ(仮面ライダー斬鬼)とトドロキ(仮面ライダー轟鬼)による“大人同士”の師弟関係も見逃せない。
ギター型の音撃弦を武器とする2人。師匠を尊敬するあまり、頼り過ぎてミスする弟子のトドロキを、ザンキは「自分流でいけ!」と背中を押して可愛がっていた。かたやトドロキのほうも、弟子が師匠の名を継承するのが通例ながら「ザンキさんのままでいてほしい」と襲名を拒否するほど師弟の絆は固い。
戦いのなかで再起不能になったトドロキの穴を埋めるべく、引退したザンキが命の危険を冒しながら現役復帰する展開も胸熱である。禁呪とされる「返魂の術」を自身に施していたザンキは、一度死した後に蘇生(ただし、最後は永遠の闇に落ちる)し、トドロキのサポートを続けたほど彼の身を案じていた。
そんな師匠の思いを知ったトドロキが奮起し、完全復活。その弟子の勇姿を見届けたザンキは、闇に落ちる前に清めの演奏によって消滅する。その切ないシーンには多くのファンが涙した。
他の師弟に目を向ければ、トランペット型の銃・音撃管を使用する仮面ライダー威吹鬼(イブキ)は、天美あきらという少女を弟子にする。
両親を魔化魍に殺された少女に、イブキは憎しみを捨てるよう諭すも、境遇の違いからすれ違う。しかし、復讐に囚われた者の末路を目の当たりにしたあきらは、イブキとの対話を経たのち、自身の進むべき道を見つけ出す。天然ボケ気味だったイブキも、しっかりと弟子を導いたのである。
また、本作のエンディングテーマ曲『少年よ』の歌唱を担当した布施明さんも、劇中でかつて鬼として活躍した経歴を持つ小暮耕之助役を演じている。2005年末の『第56回NHK紅白歌合戦』で布施さんが『少年よ』を歌唱した際には、仮面ライダー響鬼、威吹鬼、轟鬼が殺陣を披露。さらに大トリとして、細川茂樹さんまで登場した。
細川さんは「全国の少年、来年もまた一緒に鍛えようぜ」というメッセージを送り、多くの子どもたちが「勇気をもらえた」と大きな話題になった。