■亡くなった姉を追いかける悲しき旅路…『僕は旅をする』今市子
1993年に『コミック・イマージュ』(白夜書房)に掲載された『マイ・ビューティフル・グリーンパレス』でデビューし、ファンタジー、ホラー、エッセイなど幅広い分野で活躍し続けている今市子さん。
『百鬼夜行抄』、『岸辺の唄』といった数々の代表作を持つ今さんだが、読み切りとして掲載された短編『僕は旅をする』が、のちに同タイトルのエピソードとして2001年にドラマ化された。
しかもこのエピソード、『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』の一遍として構成されているため、主人公の男性・田代克也を稲垣吾郎さんが演じている。
原作では、行先も告げずに旅立った弟の足跡を姉が辿るというストーリーなのだが、ドラマ版ではこの弟と姉の立場が逆転。亡くなったはずの姉が旅をしており、それを追いかける弟の旅路を描いた実にミステリアスなエピソードだ。
全体的に淡い色彩の映像で幻想的なシーンも多く、妖しくも美しい和風ホラーのテイストを存分に堪能できる。その謎めいた設定もさることながら、旅のなかで姉への真の気持ちに揺れる弟・克也の絶妙な心情も丁寧に描かれていた。
物静かでどこか冷たい世界観に、稲垣さんの物静かな演技が見事にマッチした本作。物語のラストで彼が辿り着いたとある答えは衝撃的だ。背筋の凍りつくような恐怖とともにぞっとするほどの美しさを感じられる、実に芸術的なワンシーンとなっていた。
摩訶不思議な世界観で観る者を楽しませてくれる『世にも奇妙な物語』。今回紹介したベテラン少女漫画家たちが原作を手掛けるエピソードたちは、どれも強烈な魅力で視聴者を惹きつけていた。
コメディタッチなものからホラーテイストなものまで、作者ごとにエピソードの色合いがまるで異なるのも、本シリーズの面白い点だろう。
ベテランたちの傑作を受け継いだ、奇妙な名作回を、ぜひご自身の目で確かめてみてほしい。