元ロジャー海賊団にして‟赤髪”の兄弟分、覚醒したらどうなる? 『ONE PIECE』四皇にまで上り詰めたバギーは本当に「強運だけの男」なのかの画像
『ONE PIECE』Log Collection IMPEL DOWN DVD(エイベックス・ピクチャーズ)(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 「ワノ国編」後、主人公のモンキー・D・ルフィが四皇に選出され、世界情勢が大きく動いている『ONE PIECE』。そのなかでもルフィ同様、四皇となった「バギー」に注目している読者も多いことだろう。

 バギーの初登場は序盤の「東の海(イーストブルー)編」。だがその際はルフィにこてんぱんにされており、その後の「ローグタウン編」でもルフィの処刑に失敗。もはや小物感すら感じられるキャラであったが、今や四皇にまで上り詰め、異例の出世を遂げたキャラだ。

 たび重なる強運と偶然が重なっただけで、実力面で「海の皇帝」とは呼べないだろう……というのが大半の意見だろうが、はたして本当にそうなのだろうか?

 そこで、新四皇となったバギーは強運だけの「道化」なのか、詳しく掘り下げていこうと思う。

 

※本記事には作品の内容を含みます 

 

■元ロジャー海賊団というブランド…扉絵でも見せるシャンクスとの関係性

 まずは、バギーという海賊がなぜ王下七武海から四皇という立場についたのかという点について考えてみたい。絡んでいる要素はいくつもあるが、やはり大きいのは「元ロジャー海賊団の元船員(見習い)」という過去の肩書だろう。

 史上唯一の海賊王となったゴール・D・ロジャーの船に乗っていた者は、それだけで世間では伝説的な扱いを受けることとなる。‟海賊王の右腕”として活躍した冥王シルバーズ・レイリーはもちろん、バギーと同じ見習いだった赤髪のシャンクスも現在では四皇という同格の立場だ。

 作中ではバギー本人の実力が低レベルに描かれているだけあって、四皇に相応しくないという読者の声もあるようだが、「偉大なる航路(グランドライン)」一周を成し遂げたということは強豪海賊ひしめく後半の海「新世界」も渡り歩き、生き残ったということ。

 経歴が本物であることは事実であり、実際にインペルダウンからの脱出後に海軍からロジャー海賊団見習いであったことが明らかになった際は、率いていた脱獄囚たちからひと際憧憬を集めている。

 加えて、シャンクスとの関係性も絶妙だ。かつて彼のせいで悪魔の実を飲み込んでしまったことを恨んでいると、頂上戦争介入時に語ったバギー。だが、第581話の扉絵ではおでん屋で晩酌をしながら笑顔で盛り上がる2人の姿もある。

 作中屈指の強者であり、最終章で大きくかかわってくるであろうシャンクスとここまでフランクに接することができるだけでも、一種の強さを備えていると言えそうだ。

■実力不足でも脅威は最悪レベル? 海賊派遣からクロスギルドのトップという立場

 作中でのバギーは、“運だけの男”と思われがちだ。確かにそれも否めないが「カリスマ性」という面から見ると、かなり違った魅力があると思う。

 それが一番最初に発揮されたのは、インペルダウンからの脱獄時だろう。自身よりも懸賞金が高い賞金首を多数開放し、先述した元ロジャー海賊団の元船員という経歴の発覚、さらに白ひげからも同盟を持ち掛けられ、終盤ではシャンクスと気安く接するなど、事あるごとに評価を上げた。

 そんな海賊たちを従え設立したのが、海賊派遣組織「バギーズ デリバリー」だ。海の荒くれ者をまとめあげ、金銭的にカツカツだったこと以外は重大な問題もなく2年にわたって経営し続けられたのも、彼のカリスマ性あってのことだろう。

 そして、王下七武海制度撤廃後、部下の勘違いによってサー・クロコダイル、ジュラキュール・ミホークという超大物がバギーの舎弟のように描かれた「クロスギルド」が発足。2人からはキツイ折檻を受けるなど、実力では完全に下のはずがトップに持ち上げられてしまった。

 ただ、海軍に懸賞金をかけるという前代未聞の組織であること、まがりなりにもその長となった者が元ロジャー海賊団の元船員であるという点は、事情を知らない世間からすればたいそう悪逆非道な海賊にうつったことだろう。

 思えば頂上戦争時、ミホークがルフィに対して「その場にいる者達を次々に自分の味方につける」「この海においてあの男は 最も恐るべき力を持っている……!!」と評価していた。だが、考えてみるとバギーもそれと同じ力を持っていると言えないだろうか。いつでも消せるスケープゴートとして祭り上げただけかもしれないが、実は以前自分が下した評価に相当当てはまっていたのが彼なのだ。

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