■桜木を封じ、シューターとしても活躍「海南・宮益義範」
インターハイ神奈川県予選、海南VS湘北。素人まがいの動きと桁外れの身体能力で試合をかき乱す桜木に「よかろう…桜木を締めだす」と、高頭監督が控えベンチから呼んだのが、宮益義範だった。
宮益は身長160cm、体重42kgの一見ひ弱な選手だ。だが、高頭監督はそんな宮益を桜木にマンマークさせ、残り4人はゾーンで守るという“ボックス&ワン”の形をとり、あえて桜木にシュートを撃たせる作戦を取った。
高頭監督の「できるだけ桜木を挑発するんだ でもディフェンスは何もしなくていい」という指示に徹した宮益。そしてその作戦は見事功を奏し、桜木は盛大にシュートを外しまくるのだった。
そして宮益は神に次ぐ海南屈指のシューターであり、オフェンス面でも活躍する。ともにキツい練習に耐えてきた同級生・牧が「海南のユニフォームをとった男だぞ」と彼について誇らしく語る姿も非常に印象的だった。
■圧倒的な体格!「山王工業・河田美紀男」
インターハイ2回戦、山王工業VS湘北。流川楓のダンクを止めようとした野辺将広が軽く左手を負傷し、代わりに投入されたのが河田美紀男だった。
美紀男は高校バスケ界屈指の選手である河田雅史を兄に持ち、自身は身長210cm、体重130kgとその兄をも超える体格を誇る。誰もが期待せずにはいられない逸材であり、堂本監督も来年・再来年を視野に入れた采配だった。
美紀男の攻撃は、“ゴール下でパスを受けて振り向いてシュート”と至ってシンプルだ。しかし美紀男の体格でこれをやられると、シンプルがゆえに止まらない。さすがの桜木も「この背中と ケツの圧力が……」と、たまらずはじけ出されていた。
そして、湘北が7点リードしていた得点差も美紀男が入ったことで1点差まで追い付き、会場も“山王コール”で盛り上がる。美紀男はその体格と存在感で、一気に試合の流れを変えてしまった。
その後、美紀男は桜木に対応され途中交代、その後の出場も赤木相手に大苦戦している。しかし、もし湘北に桜木がいなければどうなっていただろう? 唯一パワーで対応できそうな赤木も桜木がいなければ兄・雅史に手一杯。湘北は美紀男一人にボコボコにされていた可能性すらあっただろう。
作中、正直パッとしない印象の美紀男だったが、実は控え選手としては十分すぎる切り札だったのかもしれない。
今回は『SLAM DUNK』チームを陰で支えた控え選手たちの名プレイの数々を振り返ってきた。
安田靖春の冷静なゲームメイク、池上亮二の堅守、宮益義範の戦術的活躍、河田美紀男の規格外の体格……このようなスタメン選手だけでなく控え選手たちの働きが、試合展開をスリリングなものにし『SLAM DUNK』をより特別な作品にしていたように感じる。