「ガンダムになれなかった名機」 アムロとシャアが愛した量産機「リック・ディアス」が秘めた魅力の画像
「MG 1/100 RMS-099 リック・ディアス(クワトロ・バジーナカラー)」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ・毎日放送 (C)創通・サンライズ

 アニメ『機動戦士Zガンダム』の第1話から登場したモビルスーツ「リック・ディアス」。同機は“クワトロ・バジーナ”を名乗っていた「シャア・アズナブル」が参加する反連邦組織・エゥーゴの機体である。

 初登場時、真っ赤なリック・ディアスに赤いパイロットスーツを着たクワトロが乗っていたため、「シャアの専用機として長く使われるのか?」と思われたが早々に破壊され、クワトロは「百式」に乗り換えていた。

 しかし、その後もエゥーゴの歴戦のパイロットたちがリック・ディアスを愛用しており、あの「アムロ・レイ」も搭乗して戦ったことでも知られる。ここでは、そんな名機リック・ディアスの魅力を深堀りし、その開発経緯や劇中での活躍、その後の広がりについて振り返ってみたい。

■モビルスーツ開発史における新時代の幕開け

 リック・ディアスは、独特のモノアイやマッシブな外見から、ジオン系のモビルスーツの印象を受ける。それもそのはずで、『総解説 ガンダム辞典』(講談社)には「旧ジオン系の技術者が設計し、ガンダム試作2号機からの技術継承がある」と記載があった。さらに小説版『機動戦士Zガンダム』にも、リック・ディアスは「ドムタイプに、ガンダム系の機能をミックスしたもの」と書かれている。

 ガンダム試作2号機もジオン系の技術者が開発に携わった機体だが、総じてリック・ディアスは「連邦とジオンの技術の融合」により誕生した機体ということが分かる。

 また採用された技術には革新的なものが多く、とくに初期型のムーバブル・フレームが用いられたことで、より人間に近い動きができるようになったのは大きい。

 そのほか、リック・ディアスに使用された構造材は「ガンダリウムγ」と呼ばれる新素材で、軽量かつ剛性に優れており、「全天周囲モニター+リニアシート」という新たなコクピットシステムまで導入。「第2世代」と呼ばれるモビルスーツの先駆けとなった機体であり、その後のMS開発の礎となっていく。

 これだけの新技術が取り入れられ、「ガンダリウムγ」を用いた新機体だけに、当初エゥーゴの首脳陣は「ガンマガンダム」と名づける予定だったという。

 しかし、ガンダムとはかけ離れた外見をしていた機体だったため、クワトロ(シャア)が宇宙用を意味する「リック」に、アフリカ大陸最南端の喜望峰の発見者である冒険者「バーソロミュー・ディアス」の名からとった「ディアス」をつけて、リック・ディアスと命名したという経緯がある。これはクワトロが、オリジナルのガンダムに敬意を払ったためといわれている。

■アムロとシャアのお気に入り?

 新世代のモビルスーツとして高い完成度を誇ったリック・ディアスは、歴代ガンダム作品のなかでアムロとシャアの両名が搭乗した機体としても知られている。

 シャアことクワトロは、自分のリック・ディアスを強奪されたうえに破壊されて「百式」に乗り換えるが、この百式もリック・ディアスと同じ開発計画で生まれた「デルタガンダム」を元に開発されたもの。実質百式とリック・ディアスは兄弟機ともいえる。

 そして実戦から7年以上離れていたアムロが、そのブランク明けに搭乗したモビルスーツもリック・ディアスだった。アムロは長いブランクをまったく感じさせず、カミーユやクワトロが手こずっていた「アッシマー」をリック・ディアスで難なく撃退してみせた。

 ちなみに物語の中盤でアムロは「ディジェ」に乗り換えるが、こちらもリック・ディアスをベースに開発された機体だ。

 アムロとシャア、稀代のニュータイプ2名がともにリック・ディアスに乗り、その発展機にまで乗り続けたことから、両名は同機の性能やコンセプトに満足したようにも思える。

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