敵との白熱したバトルや、仲間たちとの熱い友情や成長劇……快活な展開の数々で少年たちの心を掴んで離さないアニメたち。だが、“子ども向け”でありながら、なかには重々しくシリアスな展開で視聴者の度肝を抜いた作品も存在する。
今回は子どものみならず大人の心までも強烈に揺さぶった、子ども向けアニメの数々を見ていこう。
■襲来した宇宙人たちのまさかの正体とは…『イナズマイレブン』
根強い人気を誇るスポーツ種目「サッカー」。このサッカーを手軽な操作でド派手に楽しめる名作ゲームといえば、2008年にレベルファイブが発売したニンテンドーDSソフト『イナズマイレブン』だろう。
『イナズマ』、『イナイレ』などの愛称で多くのファンに愛され、ゲーム発売同年にはアニメ放送も開始された。そんなアニメ版で予想外の重い展開が繰り広げられたのが、2期に登場した「エイリア学園」との戦いだ。
数々の強豪たちと渡り合ってきた雷門中サッカー部の前に突如姿を現した「エイリア学園」。彼らは遠き星・エイリアから“星の使徒”として地球にやって来た宇宙人だった。
彼らはサッカーの試合で勝利した学校を粉々に破壊するテロリストのような存在で、主人公・円堂守たちはその圧倒的な実力に苦しめられていく。
地球外から襲来した恐ろしい宇宙人たち……かに思えた「エイリア学園」だったが、その意外な正体が明らかになるのが、アニメ第60話「エイリア学園の正体!」でのこと。
なんと彼らの正体は、れっきとした地球人であった。もとは「お日さま園」という児童養護施設で暮らしていた子どもたちだったが、施設の設立者・吉良星二郎によって強化され、各地の学園を破壊する存在となっていた。
吉良はかつて犯罪に巻き込まれ息子・ヒロトを失っており、その復讐を果たすため、人体を強化する力を持つ隕石・“エイリア石”を使い、子どもたちを強力無比な破壊者へと変貌させたのである。
宇宙人たちの意外過ぎる正体はもちろん、子どもたちを戦いへと仕向けた吉良の復讐心や執念といったどす黒い感情が滲み出た、なんとも重苦しいエピソードであった。
■シリアスに描かれる死別の重み…『モンスターファーム〜円盤石の秘密〜』
1997年にテクモ(現:コーエーテクモゲームス)から発売されたPSソフト『モンスターファーム』は、音楽CDなどからモンスターを生み出し育成する斬新なシステムが人気を博した育成シミュレーションゲームだ。
数多くの続編が生み出されているシリーズだが、1999年にはアニメ版『モンスターファーム〜円盤石の秘密〜』が放送されている。
原作ゲームの世界観にさまざまな設定を加えたオリジナルストーリーが展開される本作では、主人公の少年・佐倉ゲンキが『モンスターファーム』のゲームの世界に召喚されることで物語が始まる。
作中では原作同様の個性的なモンスターたちが数多く登場するのだが、アニメオリジナルストーリーということもあり、その内容は現実味溢れるシリアスなものが多い。
とくに重く感じられるのが、モンスターの「死(ロスト)」だ。モンスターたちとの死別のシーンはいずれも非常に物悲しい展開が多く、その死の描写は当時の視聴者を騒然とさせた。
また、原作ゲームにも登場する女性・ホリィ。メインヒロインとして登場する彼女は、故郷を“ワルモン四天王”に滅ぼされたという過去を持っている。これだけでも十分シリアスなのだが、なんとワルモンのボス・ムーが彼女の父親であることが明らかになるのだ。
その結果、ホリィはムーを倒すべきかどうか、その狭間で深く悩んでいくこととなる。
ゲーム同様、明るくコミカルな雰囲気で描かれるのかと思いきや、アニメ版ならではのシリアスな展開・設定が入り乱れる実に味わい深い作品だといえるだろう。