ミノフスキー・クラフトの先にあった「V2ガンダムの光の翼」、 宇宙世紀ガンダム作品の「MSやMAの技術」に訪れた劇的イノベーションの画像
「HGUC 1/144 V2ガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
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 アニメ『機動戦士ガンダム』の第9話「翔べ!ガンダム」の回では、主人公アムロ・レイたちホワイトベース隊が、ガルマ・ザビ率いるジオン軍の大気圏内用戦闘機「ドップ」の攻撃を受ける場面が描かれた。

 空からの攻撃に苦しめられるホワイトベースだったが、アムロが乗るガンダムはこれまでのMSでは考えられない跳躍力で、ドップが飛行する高度まで飛翔、次々と撃墜していった。これがガンダム作品で描かれたMS(モビルスーツ)による空中戦のはじまりだったのかもしれない。

 その後も長く続くガンダムの歴史のなかで、重力下におけるMSの飛行技術は進化し、空中戦の内容も変化していく。ここでは、その飛行技術の劇的な進歩と代表的な戦闘シーンを振り返ってみたい。

■ファーストガンダムにおける大気圏内の戦い

 冒頭でも触れたが『機動戦士ガンダム』でアムロが搭乗した「RXー78ー2 ガンダム」は圧倒的な跳躍力を披露したが、厳密にいうとそれは「飛行」能力ではない。では、この時代で戦闘機や艦艇以外で飛行能力を有したのは、どのような機体だったのだろうか。

 代表的なのが、アニメの第18話「灼熱のアッザム・リーダー」の回に登場したモビルアーマー(MA)「アッザム」だ。この機体は「ミノフスキー・クラフト」と呼ばれる疑似反重力システムを搭載し、短時間ながら大気圏内で浮遊することが可能だった。

 この技術は「ミノフスキー粒子」の性質を利用して斥力場を発生させることで、機体下に見えない足場を形成して、浮遊状態を維持する。ただし、ミノフスキー・クラフトシステム自体が大型で、アッザムのような大型のMAやホワイトベースのような大型艦にしか搭載できないという欠点もあった。

 アッザムに搭載されたミノフスキー・クラフトは試験段階のもので、空中でガンダムに取りつかれてしまい、ビームジャベリンで何度も攻撃されてしまう。撃墜こそ免れたが、当時の飛行技術の限界を示したシーンともいえるだろう。

 そのほか一年戦争時では、爆撃機を改修してMS運搬用のサブフライトシステムに転用した「ド・ダイYS」がおなじみ。また、脚部に大推力エンジンを搭載したMS「グフ・フライトタイプ」も少数投入されたが、大気圏内での空戦能力はお世辞にも高いとはいえないものだった。

■グリプス戦役からは、可変機の時代に突入

『機動戦士ガンダム』から7年後の、宇宙世紀0087年を描いた『機動戦士Zガンダム』では可変機が数多く登場。大気圏内で変形を行うことで、MSやMA単体でも飛行能力を有する機体が活躍する。

 その最初期に登場したのがUFOのような見た目をした可変MA「アッシマー」だ。『ガンダム モビルスーツバイブル 102号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によると、「ド・ダイYS」のようなサブフライトシステムには、上昇能力が弱いという欠点があった。

 しかし、アッシマーはこの欠点を解消し、大推力と「リフティングボディ構造」と呼ばれる飛行に適した円盤形状により、単独での大気圏内長距離飛行を実現した最初の機体である。

 アッシマーの空戦能力が輝いたのは、『Zガンダム』の第14話「アムロ再び」の回だ。主人公カミーユ・ビダンが乗る「ガンダムMkーII」と、クワトロ・バジーナが乗る「百式」という2機を相手にしながら、ブラン・ブルタークが搭乗するアッシマーは互角以上の戦いをみせる。

 飛行能力を持たないカミーユとクワトロの両機は、空を自由に飛び回るアッシマーを捉えきれず、散弾を用いた攻撃も有効打になりえなかった。

 アッシマーは2機を空中戦で翻弄したうえ、カミーユたちの母艦「アウドムラ」のブリッジを破壊寸前まで追い詰めた。

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