漫画やアニメでは作中における独自の“時間軸”が採用されており、物語ごとに異なる時間や時代の流れが繰り広げられている。しかし、昨今では長期にわたって連載・放送された作品が、実は思いのほか“短期間”のエピソードを描いていたことでファンを驚かせることも少なくない。
今回は現実世界と作中における“時間”のギャップが意外だった、衝撃の名作たちについて見ていこう。
■99巻にして語られたまさかの“経過時間”…『名探偵コナン』
1994年から『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載が始まった、青山剛昌氏のミステリー漫画『名探偵コナン』。アニメはもちろん、数々の映画作品も公開され続けている国民的人気を誇る作品だ。
謎の薬によって小学1年生の姿になってしまった主人公の高校生探偵・工藤新一が、自らを江戸川コナンと名乗り数々の難事件を解決していく本作は、トリックや謎解きといったミステリーの醍醐味はもちろんのこと、迫力のある痛快なアクションシーンや、新一とヒロイン・毛利蘭の恋模様など、さまざまな要素から多くのファンから支持を集めている。
さて、今年で連載30周年を迎えた『名探偵コナン』だが、その連載年数に対し、作中の経過時間が驚くほど短いことをご存知だろうか?
作中での“時間軸”についての事実が判明したのが、単行本99巻での一幕。メアリー・世良が新一の行方が分からなくなってからの期間を明言しているのだが、なんとその期間はたった“半年”。一応、回想のなかでのセリフであることを加味したとしても、新一がコナンになってから、まだ1年も経過していないということになる。
このため、コナンは連載当初から変わらず小学1年生であるのだが、30年間に発生してきた膨大な事件の数を考えると、1日あたり数件の事件に遭遇・解決していたことになってしまう。
無論、これも長期連載作品における“あるある”ではあるため、それを言うのは野暮ともいえるのだが……どちらにせよ、30年と半年というあまりにもかけ離れた時間のギャップには、ただただ驚かされてしまう。
■1人の少年が“勇者”になるまでの経過時間とは…『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』
1989年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)は、国民的人気RPG作品である『ドラゴンクエスト』シリーズのエッセンスを受け継いだファンタジー漫画だ。
今年で連載開始から35周年を迎えた本作も、実は連載終了時までの作中の経過時間が短いことで有名だ。
孤島デルムリン島で暮らしていた主人公・ダイが“勇者”として、宿敵である大魔王バーンを倒すまでの旅路が描かれた本作。
このダイの旅路がどのような日程だったのかがオフィシャルファンブックで詳しく語られているのだが、ダイが島を旅立ってから大魔王を撃破するまでの日数は、なんと“86日”。つまり、約3カ月ほどしか経過していないことになる。
7年間にわたって連載され、全37巻もの単行本が発行されている本作だが、1人の少年が使命に目覚めてから、数々の仲間と出会い、“勇者”として成長していくドラマがそれだけの時間内で繰り広げられていたと思うと、かなり濃密な3カ月だったといえるだろう。
また、それとともに、大魔王の野望がこれだけのわずかな時間で潰えてしまった事実にもどこか物悲しさを抱いてしまう。