■視力を奪われてしまったロイ・マスタング

 最後は作中でも多くの活躍を見せているロイ・マスタングだ。マスタングは、先に紹介したふたりとは違う状況で人体錬成を行う。いや……無理やりやらされたといったほうが正しい。

 本作のラスボスである「お父様」は巨大錬成陣の発動を計画していたのだが、そのために必要とされる「人柱」候補に挙がったひとりがマスタングだった。人柱になるための条件は、真理の扉を開けた錬金術師でなければならない。

 人体錬成を行うと真理の扉を開けることになるので、すでに経験しているエド、アル、イズミは人柱となった。そしてマスタングも狙われ、強制的に人体錬成をさせられる羽目になる……。

 錬成が終わった後、一見したところマスタングの肉体に異変は見られなかった。しかし、「まっ暗で何も見えん ここはどこだ?明かりは?」と話し、すぐに目が見えなくなっていることがわかる。代償として視力を奪われてしまったのだ。

 マスタングは望んでいない人体錬成によって目が見えなくなってしまったので、可哀想としかいいようがない。その後の戦いもホークアイの補助なしではできなかった。

 錬成陣なしで錬金術を使えるようになったのは便利かもしれないが、それ以上に代償が大きすぎる……。

 

 錬金術を極めていくと「ひょっとしたら人も生き返らせることができるかも」という誘惑もあるのかもしれない。しかし、それができてしまうと生死の概念が覆され、世界の理が大きくねじ曲がってしまう。

 人が人であるために……禁忌と呼ばれている理由もそこにあるのではないだろうか。

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