■優しいサイヤ人として生まれた悟飯が背負った悲しき運命
続いて、「人造人間・セル編」で悟飯が見せた「隙」を紹介しよう。
その潜在能力を信じた悟空に促され、ついにセルと相まみえた悟飯は一時激しく吹き飛ばされるが、セルも驚くほどのタフさで再び立ち上がり静かに語りかける。
「ボ…ボクはほんとうは戦いたくないんだ……殺したくないんだよ………」「…たとえおまえみたいに ひどいヤツでも………」と、地球の命運を脅かす相手に対して情けをかけるのだ。そしてそれは同時にセルに対する挑発とも取られてしまう。
潜在能力を開放するカギが自身の怒りであることを自覚していた悟飯だったが、そのことを知ったセルは本気の悟飯と戦うべく仲間を傷つけ始める。
16号が侮辱され惨殺されたことでついに覚醒した悟飯だったが、自身の圧倒的な力に慢心し、笑みを浮かべながらセルを弄ぶ。力の解放と共に好戦的なサイヤ人としての闘争本能が目覚め、とどめをさせという悟空に対しても「ふふ…まだはやいよおとうさん あんなやつはもっと苦しめてやらなきゃ…」と言う始末。そしてこの悟飯の行動によって、悟空や界王様までもが犠牲になるという最悪の結果を招くのである。
悟飯の純粋な優しさにより戦いを拒否したことで16号が犠牲になり、覚醒してもサイヤ人の本能が騒いだせいで悟空たちが犠牲になるというこの悲しき一連には、悟飯にも少々同情してしまうというものだ。
■【番外編】期間の設定を間違えて少し後悔するセル
最後におまけとして、サイヤ人ではないセルのとある行動についても触れておきたい。
完全体となったセルは、人間の恐怖に怯えた顔を見るために「セルゲーム」という大会を開くことを決める。質の良い石がある土地で武舞台を用意し、テレビの前で全世界に向けて丁寧に大会の告知をおこなうのである。
猶予期間中に軍隊からの攻撃に応戦する以外地球への危害はいっさい加えず、「たいくつだ……」と舞台上で静かに夜を明かす姿も見られるほど、律儀にその日を待ってくれるセル。
トランクスに最終的な目的を問われた際、セルは「征服などという俗なことに興味はないし……」「あえて言えば楽しむことが目的かな?」と答えているが、単に蹂躙するのではなく、ゲームで己の力量を測ろうとした彼の姿勢のおかげで地球が救われたといっても過言ではないだろう。
サイヤ人でも、己の力を誇示し絶望を味わわせる者・より強い敵と闘おうとする者・弱者を弄ぶ者などさまざまだ。戦闘民族ゆえか、闘いのなかでそれぞれの欲求を満たすために敵に塩を送ることで立場が逆転し窮地に陥ることもしばしばなのだが、一見すれば脳筋とも取れるサイヤ人のその特性が、のちのドラマチックな展開を生むというものだ。
放送中の『DAIMA』でもこうした敵に塩を送る瞬間が見られるかもしれないが、そこはサイヤ人のお家芸ということで、我々視聴者としてものちの展開に期待が膨らむお楽しみポイントである。