「まさか死んでしまうなんて」『金田一少年の事件簿』友達が犠牲になった「やるせない事件」異人館村殺人事件に異人館ホテル殺人事件もの画像
週刊少年マガジンコミックス『金田一少年の事件簿』File2 異人館村殺人事件(講談社)/原作:天樹征丸・金成陽三郎、作画:さとうふみや

 原作:天樹征丸氏・金成陽三郎氏、作画:さとうふみや氏による『金田一少年の事件簿』(講談社)は、シリーズ累計発行部数が1億部を超える人気ミステリー漫画だ。

 主人公・金田一一(きんだいちはじめ)は落ちこぼれの高校生だが、事件を前にするとまるで別人だ。いろんな人間の細かい動作を見逃さず、あらゆる角度から事件解決の糸口を探す。そして、「じっちゃんの名にかけて」という名台詞を口にして、誰も解き明かすことのできなかった謎を解いてしまうのだ。

 鮮やかな事件解決が見どころの本作だが、その過程でいろんな人間の本性を見ることができるのも魅力のひとつである。そこで今回はいろんな事件がある中、「はじめの友達が死んでしまう」やるせない事件を紹介していきたい。

■救われない結末…「異人館村殺人事件」時田若葉

 最初に紹介したいのは「異人館村殺人事件」だ。この事件ははじめと美雪の同級生である時田若葉が関係している。

 若葉は教師の小田切進とホテルから出てくる写真を撮られて騒ぎになってしまい、実家のある六角村に連れ戻される。彼女は親に決められた許嫁と結婚する羽目になるのだが、その式にはじめと美雪が招待されることに……。

 そして式がおこなわれる前夜、若葉は首なし死体として発見される。そこからは六角村にある六つのミイラになぞらえて、いろんな人間がミイラと同じ形で殺された。

 やがてはじめが事件を解き明かすと、とんでもない事実が分かる。最初の死体は若葉のものではなく、若葉は自身の死を偽装して別の人間を殺していたのだ。

 若葉は愛する小田切のため、彼の復讐に手を貸していた。実は小田切はミイラにまつわる悲劇の犠牲者であり、その復讐のため若葉を利用していたのだ。さらに若葉は小田切に絞殺される際、抵抗することなく死を受け入れてしまう。そんな若葉の気持ちを悟った小田切も、彼女を想って涙を流していた。

 小田切は若葉を利用しているだけと自らに言い聞かせていたが、本気で若葉を愛していたにちがいない。彼の境遇は確かに可哀想だが、愛のために全てを捧げた若葉はそれ以上に悲しすぎる……。

 あまりにも救われないふたりの結末にはじめも涙を流し、事件で負った怪我が痛むとごまかしていた。なんとも悲しく辛い想いが残る事件だった。

■無念の死に心が痛んだ「異人館ホテル殺人事件」佐木竜太

 次は、はじめの「助手」を自称していた佐木竜太が巻き込まれた事件を見ていこう。それが「異人館ホテル殺人事件」で、古いホテルでおこなわれる推理イベント“ミステリーナイト”に「赤髭のサンタクロース」を名乗る人物から脅迫状が届いたことから始まる。

 はじめの後輩である佐木は現場でずっとビデオカメラを回しており、周囲の様子を撮りまくっていたために、犯人が使った殺人のトリックに気づいてしまう。そして、佐木はすべてをはじめに教えようとして呼び出した。

 それを知った犯人は佐木が邪魔になり、計画にはなかった佐木殺害を実行する。佐木を絞殺してからはじめを気絶させ、はじめの部屋のバスルームに吊るし上げたのだ。これによってはじめは、佐木殺しの犯人として疑われることにもなる。

 いつも側にいた佐木が殺され、しかも自分が犯人になってしまう……。気持ちの整理がつかず、佐木の死は自分のせいだと心が折れかけたはじめ。しかし、このままでは犯人の思うツボだと気付き、佐木の無念を晴らすため自らを奮い立たせるのだった。

 佐木ははじめと関わりが強くなっていきそうなキャラだったので、その死は衝撃的であった。後に弟の竜二が兄の意志を継ぐことになったので、どこか救われた気分にもなった。それでも、何も悪いことをしていない佐木竜太の死は無念でしかない。

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