■もはや本格ホラーだった 「亡者道」
「亡者道」の回は、飛騨の千町ケ原や御嶽山周辺が舞台となっている。主人公は、肝の座った平十郎という青年だ。
亡者が通る道といわれている「亡者道」で猟をしていた平十郎。この亡者道で猟をしてはいけないという先人の忠告を無視し、「かすみ網」という網のワナをしかけて鳥のツグミを捕っていた。
その猟の最中、平十郎は1羽のツグミに目を突かれて負傷、ひとり山小屋で夜を明かすことになる。その晩、平十郎はかつて爺様が言っていた、亡者道で猟をするとゾッとするような声をあげて亡者が通るという言葉を思い出し、夢でも見たのだろうと笑い飛ばした。
すると、突然小屋の壁の隙間からツグミの大群が現れ、小屋内を飛び回る。あわてて逃げ出した平十郎は、今度は大量の火の玉が飛んでいるのを目撃。それを追いかけると、自分がしかけた「かすみ網」のワナに無数の火の玉が引っかかり、うめき声をあげているのを見た。
必死にワナを取り外すと、網にかかっていたのは大量の骸骨。その後も自分の名を叫ぶ不気味な声から逃げ惑い、沼地までたどり着くが、水の中から出てきた手に足をつかまれる。そして大量のドクロが、過去に平十郎のしでかした悪事に対する恨み言を述べた。
そんな目にあいながら、命からがら自宅まで逃げ帰った平十郎だったが、家にいた爺様の顔までドクロになっているという、最後までホラー展開が続いたエピソードだ。
かなりベタなホラー展開ではあるが、昔話だと思って油断していた視聴者にとっては、不意討ちだったことだろう。
ほのぼのした昔話や、教訓の得られる話が多いなかで、突如恐ろしいエピソードが描かれるのも『まんが日本昔ばなし』ならでは。とくにホラーが苦手な子どもにとっては、忘れられないトラウマ回になったかもしれない。