「お前もう船降りろ」「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ」 …ネット上に広まった『ワンピース』の「作中には存在しない」セリフの画像
DVD「ONE PIECE〝3D2Y〟 エースの死を越えて! ルフィ仲間との誓い[通常版]」(エイベックス・ピクチャーズ) (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 漫画『ONE PIECE(ワンピース)』では、ときに心が震えるような名言が飛び出すことがある。ルフィをはじめとする「麦わらの一味」だけでなく、敵対している海賊や、世界政府側の人物から飛び出した言葉に感動させられる場面も少なくない。

 そんな『ワンピース』の名言はネット上でも頻繁に引用されているが、そのなかには作中に存在しないモノまで含まれているのをご存知だろうか。

 そこで今回は、ネット上では有名な言葉ながら、実は『ワンピース』の作中に存在しないセリフを紹介しよう。

■ルフィが仲間にそんなことを言う?

「お前もう船降りろ」。ルフィのことをよく知っている『ワンピース』読者であれば間違いなく違和感をおぼえる、このセリフ。なぜかルフィが本当に言ったセリフだと勘違いしている人が多いようだが、このようなルフィのセリフは作中に存在しない。

 実際はネット掲示板から端を発し、それが派生するなかで、ルフィがウソップに対して「お前もう船降りろ」と言っているコラージュ画像が出回り、それが拡散されたものである。

 ちなみにこの「お前もう船降りろ」のコラージュ画像の元ネタは、コミックス第5巻の第41話で、ルフィがウソップに対し「おれ達もう仲間だろ」と告げ、船に乗るようにうながしたシーンのセリフを改変したもの。「お前もう船降りろ」とは真逆の言葉を伝える、感動的なシーンのものだった。

■別作品の名言がどうして…?

 同じく、誰かが作成したコラージュ画像をきっかけに、ルフィの言葉だと勘違いされたのが、「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!!!」というセリフだ。

 実はこのセリフ、『ワンピース』と同じ「週刊少年ジャンプ」に連載されていた漫画『ツギハギ漂流作家』の主人公、吉備真備のものである。

 なんとなくルフィも言いそうな言葉だったこともあってか、ルフィが叫んでいる漫画のコマに、同セリフを貼りつけたコラージュ画像が出回る。それを見て、本当にルフィのセリフだと信じてしまった人もいるようだ。

 そして、あろうことか多数のジャンプキャラが登場するゲームにて、ルフィのセリフとして収録されてしまうという珍事まで発生した(のちのアップデートで削除されたが……)。

■四皇シャンクスの言いそうで言ってないセリフ?

 作中でルフィに負けないくらい名言を放っているのが、赤髪のシャンクスだ。「この帽子をお前に預ける」「“新しい時代”に賭けてきた」「この戦争を終わらせに来た」などは、作品に詳しくない人でも聞いたことくらいあるのではないだろうか。

 なかでも汎用性の高いものは“シャンクス構文”などと呼ばれ、「◯◯をお前に預ける」のように、シャンクスをまねて日常生活で使った経験がある人もいることだろう。

 そしてネット上で広まったシャンクス構文のなかに、実は作中に登場しない偽物の構文が存在する。それが「◯◯をお前に教える」というものだ。

 いかにもシャンクスが言いそうなセリフではあるが、実はワンピースを扱う考察動画のサムネイル画像に書かれた、架空のセリフがきっかけとなって広まったものだった。

 1997年から連載が開始した『ワンピース』は、いまや誰もが知っている国民的作品であり、さまざまな場所で話題にされてきた。そのなかには真偽の怪しい情報も含まれ、インターネットの拡散力の高さもあいまって、誤った情報まで真実のように広まってしまったのだろう。逆をいえば、それだけ多くの人の目に触れるほど、作品が認知されている証しなのかもしれない。

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