車田正美さんの描く『聖闘士星矢(以降、星矢)』は、1985年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された人気バトル漫画である。
ギリシャ神話をモチーフとした本作は、漫画だけでなく、テレビアニメ、映画、ゲームなどマルチなメディア展開でヒットを飛ばし、半世紀近く経った現在も、さまざまなかたちでシリーズ連載が続く人気作だ。
そんな『星矢』の作中には、当時の子どものためになる「マメ知識」のようなセリフも多く、感心させられることがたびたびあった。
たとえば、“白鳥座の氷河”により、星座の「はくちょう座」は“スワン”ではなく“キグナス(ラテン語)”であることを知ったり、“ダイヤモンドダスト”が寒冷地などでまれに見られる「雪が結晶のまま落ちてくる」現象だと学んだりもした。
とくに、本作で屈指の人気を誇る黄金聖闘士にまつわる情報は自然と頭に叩きこまれ、「第一の宮は白羊宮」「守護する黄金聖闘士は、牡羊座のムウ」といった具合に、12星座はおろか、黄道十二宮の名前や順番、さらに“アリエス”のようなラテン語呼びまで覚えてしまったファンは多いはずだ。
そこで今回は、筆者がいまだに忘れられない、黄金聖闘士のセリフによって学んだマメ知識を紹介しよう。
■「光速拳」はまさに光の速さ! 熱いバトルで学んだ用語
「光速」といえば光が伝播する速さのことで、SF作品などでは速さの目安として用いられることが多い。そのすごさを熱い戦いのなかで実証してみせたのが、獅子座の黄金聖闘士アイオリアだ。
青銅聖闘士粛清のため日本に来たアイオリアに対し、星矢が放った「ペガサス流星拳」はすべてすり抜けてしまう。
驚く星矢に対し、アイオリアは青銅聖闘士の動きはマッハ1、白銀聖闘士でもマッハ2~5、だが「黄金聖闘士は1秒間におよそ30万キロメートル…」「つまり地球を7回り半という速さをもっている!」という衝撃の事実を明かした。
光速は1秒間に「約30万キロメートル(※マッハ90万弱)」進むのに対し、音速(マッハ1)は「約340メートル」である。単純計算ではあるが、黄金聖闘士であるアイオリアと青銅聖闘士の差は「約88万倍」という途方もないものになる。
ちなみに、獅子宮で洗脳されていたアイオリアのセリフを振り返ると、星矢の「流星拳」が1秒間で百発なのに対して、「ライトニングプラズマ」は「1秒間に1億発もの拳が敵にめがけてかけめぐる!」と説明していた。
いくらカシオスの助力を得たとはいえ、青銅聖闘士ながら黄金聖闘士に対して、これだけの差を埋めた星矢の底力は計り知れない……。
■黄金聖衣も凍結する「絶対零度」の存在
聖域十二宮のうちカミュが守護する宝瓶宮で、氷河との熱い師弟対決のなかで飛び出したマメ知識が「絶対零度」だ。
東シベリアでの修行時代に、カミュが「いいか 氷河、絶対零度とは全てのものが凍結される摂氏零下273.15度の温度をいう」「つまり絶対零度とは物質が全ての運動を失う温度のことなのだ」と語るシーンがある。
幼い頃、一番冷たい温度は水が氷になる“0度”だと思いこんでいた筆者は、このとき知った知識がのちに大いに役に立った。
最上級の黄金聖衣は-273.15度、白銀聖衣は-200度、青銅衣は-150度で“凍結”するという。カミュでさえ絶対零度に“近い”程度の凍気だったが、氷河は-273.15度に至ったことで黄金聖衣を凍結させて勝利をおさめている。
なお、物質が凍るというのは液体が固体になる現象で、分子が運動を止めた温度にあたる。つまり黄金聖衣を凍結させるということは、大雑把にいえば、聖衣が持つ本来の機能が失われる……という意味になるらしい。