鳥山明さんの『ドラゴンボール』(集英社)は、話が進んでいくにつれ、地球という舞台を超えて宇宙の戦いにまで発展していく。それに伴い、地球人の強さというものはすっかり忘れ去られてしまう。
最終的には、ナメック星の最長老から潜在能力を引き出されたクリリンが地球人最強(※ただしブウの転生体で力量が測り知れないウーブは除く)という感じになったが、そのずっと前にも誰も超えられなかったであろう「最強の地球人」がいた。
それが、亀仙人や鶴仙人の師匠である武泰斗だ。武泰斗は作中ではすでに故人となっていて、どれほどの強さがあったのかは知られていない。しかし、逸話などから振り返ると、スゴい人物だったのが分かる。
そこで今回は武泰斗に焦点をあてて、その「地球人最強」といえる強さについて考察していきたい。
■亀仙人や鶴仙人という有能な後継者を輩出
武泰斗が亀仙人と鶴仙人の師匠であることは、亀仙人が語っている。亀仙人といえば、「武天老師」として名を馳せた伝説の武道家である。
悟空やクリリンがあそこまで成長できたのは、亀仙人がいなかったらできなかったことだろう。さらに亀仙人は自ら天下一武道会に変装して参加し、まだまだ現役の活躍も見せていた。
そんな亀仙人とは対照的だったのが鶴仙人で、武道を平気で悪用するような存在である。しかし、だからといって彼は無能なわけではない。天津飯という天才武道家も育て上げているからだ。
そして、悟空、クリリン、天津飯の世代は、修行を繰り返すことで亀仙人たちの力を軽々と上回ることになった。これもおそらくふたりの指導力があったからこそで、源流にある武泰斗の教えの良さにもつながっている。
魔封波で気を扱えているなど、作中での描写から、気功波を生み出したのは武泰斗ではないかと筆者は思う。それによって、かめはめ波やどどん波といった必殺技が生まれた。そのほか鶴仙流、そこから派生した新鶴仙流では舞空術や太陽拳を開発するなど、気の使い方がバラエティに富んでいる。
このように、武泰斗の教えからいろいろな技が派生しており、彼は作中の武術に欠かせない存在だといえる。もし武泰斗がいなかったとしたら、悟空たちの活躍はなかったといえるかもしれない。
■ピッコロ大魔王が名前を聞くだけで怯える武道家
次は武泰斗の強さを知らしめたエピソードだ。それはピッコロ大魔王の反応からもよく分かる。ピッコロ大魔王は、ピラフ一味によって封印から解かれると、真っ先に部下に武道家を抹殺させた。それはそのまま、武泰斗の存在を恐れていたことの証明でもある。
当時ピッコロ大魔王の強さは圧倒的で、対抗できる存在などいなかった。しかしそんな中、武泰斗は「魔封波」という秘術を編み出し、ピッコロ大魔王を自身の命と引き換えに封印するのだった……。
だからこそ、ピッコロ大魔王は武泰斗のような人物が再び現れるのではという恐怖をずっと抱き、武道家の抹消に力を入れたのだろう。その名を聞いただけで震え上がり逃げ出すほどなので、彼にとってよほど武泰斗が怖い存在だということが分かる。
しかも魔封波の凄いところは、あれほどの力を持つピッコロ大魔王が何もできないというところである。それほど高度な術を開発するのは、技のデパートと呼ばれるクリリンでも不可能だろう。