ドレン、ガデム、トクワンも…『機動戦士ガンダム』過小評価されがちだけど「実は有能だったジオン軍人」の画像
「1/144 旧型ザク」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 『機動戦士ガンダム』に登場する主人公のアムロ・レイは、少年でありながらニュータイプの力を持ち、モビルスーツ(MS)のパイロットとしてもシリーズ屈指の実力を持っていた。そして、そのアムロが乗ったRX-78-2ガンダムも、MS戦に後れをとっていた連邦軍が形勢逆転の一手として作り出した高性能のMSだった。

 そんな反則級のガンダムと戦うこととなったジオン軍の兵士はたまったものではないだろう。結果、必要以上に過小評価されてしまった兵も、たくさんいるように感じる。

 そこで今回は『機動戦士ガンダム』で、過小評価されがちなジオンの有能軍人を振り返っていこう。

■シャアもその実力を買っていた「ドレン」

 シャア・アズナブルの副官を務めていたドレンは、過小評価されている軍人の一人だろう。第1話「ガンダム大地に立つ!!」から登場したドレンは、ジオン公国軍宇宙攻撃軍所属で階級は少尉。太いもみあげに垂れ目、ずんぐりした体型と見た目こそデキる男には見えないが、中身は非常に有能な軍人だった。

 その証拠に、安彦良和氏の漫画『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』では、互いに他隊所属だったシャアとドレンが通信するシーンがあり、叩き上げで忌憚なく自分とやり取りするドレンに対して、シャアは「ドレン少尉か 使えそうだな」「覚えておくか」と心の声を漏らしている。当時、中尉だったシャアだが、この頃から副官候補としてドレンに目を付けていたことになるのだ。

 実際、隊の長でありながら自らモビルスーツに乗り込み戦うことを好んだシャアにとって、代わりに艦の指揮を任せられるドレンは非常に頼りになる副官だっただろう。そして、ドレン本人も自分が求められている役割を熟知していたように感じる。

 その後、ガルマの死によりシャアは左遷。ドレンは大尉に昇進し、ムサイ級3隻を抱えるキャメル艦隊の指揮官となる。アニメ第32話「強行突破作戦」では、ドレンの艦隊でホワイトベースの進路を塞ぎ、あとを追うシャアの艦隊とで挟撃する作戦を執った。

 しかし、地上で経験を積んだホワイトベース隊と、宇宙に上がり、さらにニュータイプの能力を高めたアムロは化け物だった。

 シャアの到着前にキャメル艦隊は敗れ、ブリッジにいたドレンは生身のまま宇宙空間に放り出され最期を迎える。ドレンの戦死を知ったシャアは「あのドレンが 私の到着まで持ちこたえられんとは…」と呟いている。皮肉にもドレンの死によって、シャアが彼に対してどれだけ信頼を置いていたかが再確認できるシーンとなった。

■老獪な操縦テクニックと兵士としての意地を見せた「ガデム」

 次は、第3話「敵の補給艦を叩け!」に登場したガデムだ。

 ガデムは、ジオン公国軍のベテラン士官であり、階級は大尉。年齢のため最前線での任務を外れ、旧式の補給艦パプアの艦長として後方支援に従事していた。作中では、サイド7でホワイトベース隊との戦いで戦力を消耗したシャアのムサイに補給をおこなうべく派遣されている。

 補給中の無防備な状況をホワイトベース隊によって襲撃されるが、ガデムは自ら旧ザクに乗り込み補給任務をやり遂げた。混乱する現場で、経験に基づく臨機応変さとベテランの意地を見せたのだ。

 しかしその代償は大きく、母艦・パプアは撃沈されてしまう。怒りのおさまらないガデムは、旧ザクでアムロのガンダムに突進。武器なしの旧ザクとガンダムという、はじめからかなり分の悪い戦いだったのだが、ガデムは「素人め! 間合いが遠いわ!」とガンダムの初撃をかわし、自らはショルダータックルを決め、MS戦の経験豊富さも見せている。

 漫画『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』では、アムロのガンダムではなくカイ・シデンのガンキャノンを急襲。パニックに陥るカイをすんでのとこまで追い詰めるも、ハヤト・コバヤシのガンタンクの砲弾を受け、アニメ・漫画ともに、この補給任務でガデムは戦死することになった。

 MSの進化や、シャアやアムロ若手の台頭など、時代の流れに取り残された感のあるガデムだったが、経験に基づくモビルスーツの操縦技術は確かなものであり、その最期はベテラン兵士の意地をも見せてくれた。

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